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Blue

著者:葉真中顕



平成15年に青梅で起きた一家惨殺事件。引きこもりであった次女が、両親、そして姉と甥を殺害。その後、薬物を摂取した状態で入浴して、事故死した、という表向きは言われている。だが、事件から半年、その事件の裏付けを担当することになった藤崎は、加害者とされる次女が引きこもりではなく、家出をし、政治家なども関与している、と言われた「プチ・ハニィ事件」の舞台であるデートクラブに在籍、しかも、ブルーと呼ばれる子供がいたらしい、という情報を得て……
というところから始まる平成時代を振り返りながらの物語。
何と言うか、著者のデビュー作である『ロストケア』、2作目の『絶叫』、特に2作目の『絶叫』に近い印象。
冒頭に書かれているのでネタバレではないだろう、という判断で、物語の中心にいるのはブルーと呼ばれている人物。バブルの余韻が残る平成元年に、青梅事件の加害者とされている次女の息子として生まれた存在。そして、平成最後の日に死亡した、とも明言されている存在でもある。そんな彼の人生を、時代の、どちらかと言えば「負の側面」と言われるようなものと共に綴られていく。ただ、時々、ブルーの人生を俯瞰したような物言いの話が挿入されつつ、基本は犯罪の捜査をする藤崎(第1部)、綺乃(第2部)の捜査過程に合わせてなので、読みやすかった。
とにかく、平成の間に起きた事件、社会問題などを上手く物語へと落とし込んだ、というのを思う。バブルの残り香。不況の始まり。デートクラブやら、援助交際なんていうようなアレコレ。さらに、貧困、無戸籍、外国人実習生などなど……。そういう報道などで言われつつも、しかし、じゃあ、それが解消されたのか、と言えば「NO」と言わざるを得ないままに置き去りにされたもの。その中で、最底辺の状況で育つこととなるブルー。平成16年を舞台にした第1部では、その過酷な幼少期とそこで至ってしまった悲劇について。そして、平成31年を舞台にした第2部ではそんな幼少期を過ごしたブルーに訪れたものが……それぞれ深く印象に残る。
こういうと何だけど、ブルーは確かに、数多くの犯罪行為をしているのだけど、でも、何か同情というか、そういうものを覚えてしまう。それは、育った環境もそうだし、第2部に関しては、褒められることではないけど、一応、人助けのようなこともしているため。そして、捜査する側の刑事。家庭を顧みずに仕事に打ち込んだ結果、家庭を失うこととなった藤崎。結婚をし、子供を授かったものの、その子供にどうしても愛することが出来なかった綾乃。その綾乃とコンビを組むこととなったのは、藤崎の娘・司。綾乃や藤崎は、一線を越えることはなかったわけだけど、でも、一歩違っていたら……。そういう部分も大きいのだと思う。そして、何よりも、ブルーが(曲がりなりにも)安定を得たのは……と考えると……
そういうのを考えると、平成という時代のアレコレを入れつつも、デビュー当初の著者の作品にあった貧困とか、そういうものが主なテーマなのだろう、というのを感じる。言い換えれば、そういった貧困とか、そういうものが蔓延しやすくなってしまった時代だった、ともいえるのかもしれないが。

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