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ふりむけばそこにいる 奇譚蒐集家 小泉八雲 罪を喰らうもの

著者:久賀理世



親族に疎まれ、失意を抱えたまま辺境の神学校に編集したオーランドが、この世の怪を集めるパトリック、後の小泉八雲と共に奇妙な事件の謎を解くシリーズ第2弾。
1巻目のときは、文字通りの「連作短編」という感じだったのだけど、今回は、3編の構成ではあるのだけど、それぞれの登場人物が重なっており、なおかつ、3編目で、それぞれの人生事情が積み重なって……という形でまとめられている。しかも、物語として「不可思議な少年」という部分で続いていく、という共通点もある。
1編目は、オーランドが、ものすごい勢いで成長していく少年に出会って、というところから始まる物語。その中で出てくるのは、露店でレモネードを売る少年。身体に不自由があるが、それを感じさせずに働く少年。そんな彼が持つ手回しオルガン。そこに詰め込まれた想い。話としては、決して意外な展開、というわけではない。しかし、オーランド自身がずっと抱えていた心残りとリンクしており、オーランドの掘り下げという意味でも大きな意味のある話だったように思う。
2編目は、オーランドらの神学校へ入り込んだ一人の少年。彼は別に幽霊だった、とか、そういうわけではなく、ただ、戻ってこない飼い猫を心配し、探していた、というだけのこと。そんな中、1匹の美しい蝶を見かけて……。こちらも、ある意味で「やっぱり」という印象の結末ではある。けれども、繊細な少年が描いた絵と、そこから生まれた1匹の蝶。その対比が印象的。
そして、そんな登場人物たちが、重なって、の3編目。
1年前、学園の教会で不可解な死を遂げた生徒。その死は事故死として処理されたのだが、再び、そこで一人の老人が死んでいて……
1年前に死んだ学生・アンソニー。彼の友人であった学生は、彼が殺されたのではないか? と疑っていた。そして、親しかったものを集めて、交霊会を行うのだが……。それまでのエピソードで出てきた学生たちの抱えていた秘密、後悔。そんな中で、それぞれが、アンソニーに対して想いを抱いている。さらに、アンソニー自身の出自などもあって……。この辺り、1編目にもあったオーランド自身の問題などとも絡んで、しかし、オーランドにあって、アンソニーらにはなかったものもあって……という部分が印象に残る。
イギリスの貴族やら何やら、という世界観。その中で翻弄される若者たち。それ故の心残り。そんな中でオーランドが得た、パトリックというかけがえのない友。そういうものを強く感じさせる話になっている。

No.5157

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