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検事の信義

著者:柚月裕子



佐方シリーズの短編集シリーズ第4作。全4編を収録。
帯に「6年ぶりの新作」とあるように私が読んだのも5年半ぶり。考えてみると出版社が宝島社から、角川書店にかわっており、何か色々とあったのかな? という風に思ってしまう。
1編目『裁きを望む』。住居侵入、および窃盗で逮捕された男。証拠が不十分ながら起訴され、しかし、その後、アリバイが判明して無罪に。被告は当初から、無罪を訴えており、それが通った形になった。しかし、わからないのは、なぜアリバイがあるなら最初からそれを主張しなかったのか? さらに、盗まれたとされる高級時計の持ち主と被告は、非嫡出子という形の親子関係にあって……。一応は、形としては無罪とされるが、しかし、チグハグな状況を佐方が捜査して……。被告が何を狙っていたのか、という部分はある程度、予想できたのだが、そんな中、仮に微罪であっても……という佐方の「罪は真っ当に裁かれねば」というのを感じさせてくれる。
ちょっと異例と感じたのは、3編目『正義を質す』。司法修習生時代の同期、木浦が婚約解消で空いた旅行に行かないか、と誘ってきた。そんな旅行中、話題に挙がったのは週刊誌に乗った検察の裏金疑惑。だが、そのことに違和感を抱く佐方。そして、暴力団抗争の噂……。ピンと来た人もいると思うのだが、『孤狼の血』などとちょっと関わっており、そして、その主人公・日岡もちょっと登場する。真っ当な裁きと暴力団抗争という辺りのカラーが、「上に書いた『孤狼の血』のそれのようなカラーで印象的だった。
そんな中で、やはり佐方の人物像が印象の残るのは表題作『信義を守る』。認知症を患った85歳の老婆が他殺体で発見され、2時間後、そこから数キロ離れた場所で発見された息子が母親の殺害容疑で逮捕された。介護疲れによる殺害。そういう形で裁判が進んでいたのだが……
取り調べで被告が語った動機。確かに、大まかな流れは合っているのだが、細かなところで被告の主張することとは全く真逆の証言たち。そして、何よりもの謎は母親を殺害したのちの空白の2時間。確かに、離れた場所に入る。しかし、被告が主張するように逃亡を図った、にしては近すぎる。そもそも、逃亡を図るなら、屋外で殺害せず、家の中で殺害して逃げれば良かったはず……
関係者への丁寧な聞き込み。被告のちょっとした様子。そして、根本的な謎は何なのか? そういうところを丁寧につぶしていき、そして、1編目と同じく「真っ当な裁きを」というのを組織内の反発を超えても、という姿に、佐方のゆるぎない信念が感じられる。
これまでのシリーズと比べると、ちょっとライトな印象はある。ただ、4編目など、佐方の魅力がしっかりと感じられるのが流石。

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