FC2ブログ

逢う日、花咲く。

著者:青海野灰



13歳で心臓移植を受けた僕は、それ以降、自分が女の子になる夢を見るようになった。これは、ドナーとなった少女の記憶なのか? 明るく、快活なその少女に、僕は恋をした。しかし、それは決して叶うことのない恋……
第25回電撃小説大賞・選考委員奨励賞受賞作。
上に書いたような形で物語が開始され、主人公の八月朔日は、夢で見ているドナーと思しき少女がなぜ死んだのか、について調べ始めることになる。……と、こうやって書くと現実的な物語なのかと思えるのだけど、実はかなりファンタジー色が強め。
というのも、物語は、その少女・葵花の視点でも物語が綴られ、しかも、葵花もまた八月朔日の姿を見ることが出来る。まるで、自分に就きそう守護霊のように。そして、ひょんなことで、八月朔日からは「夢の中」で、そして、葵花にとっては守護霊と、会話をすることができるようになる。そして、そのような中で、八月朔日は、葵花の死の原因を探ることになって……
夢の印象の通り、明るく快活な葵花。周囲からも好かれていた少女。しかも、その死因は自殺だという。だが、夢の中でも、周囲の人びとの証言も、自殺の原因などわからない、という。だが、その一方で、なぜか葵花に親し気に迫る教師の星野。その星野を慕っている女子生徒によるイジメなども出てきて……
それを解決するために、八月朔日は過去に介入しようとするのだけど、当然、そこには矛盾が生じる。言うまでもなく、葵花が死なない、ということは、ドナーがいなくなる、ということなわけ。ただ、この部分において、八月朔日の、自分に対する劣等感みたいなものが上手く機能している、というのは感じる。つまり、自分の病が原因で両親は離婚。健康になった、とはいえ、誰かの命で、という想い。しかも、その誰か、が、葵花という憧れの対象になった、ということ。この辺りの想いの自然さ、というのは上手く繋がっているな、というのを感じる。
ただ……全体を通してみると、引き金となった教師の存在が何だかな……というのがあるし、また、実際に過去を改変したわけだけど、そういうところでのパラドックスとか、そういうのが何か、おざなりなままに終わってしまったかな? という感じもする。作中では、ハッピーエンドになっているのだけど、読んでいる身としては、「うん?」という気持ちが残った。
リーダビリティの高さ、雰囲気とかは好き。だからこそ、あと一歩、という感じだろうか。

No.5172

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト

COMMENT 0