FC2ブログ

軍艦探偵

著者:山本巧次



短期現役士官制度に応募し、海軍主計士官となった池崎は、戦艦榛名へと配属された。山本五十六連合艦隊司令長官の視察を控え、緊張感の増すその榛名で、運び込まれたはずの野菜箱の一つが消失したことが報告される。軍内での食料盗難・銀蠅かと思われたのだが、なぜか食材箱の数の総数は合っていて……(『多すぎた木箱』)
など、池崎が配置された軍艦内で起こる事件の謎を解く連作短編集。
こういう言い方は何だけど、軍艦内での「日常の謎」ミステリと言った趣。
粗筋として書いた1編目の『多すぎた木箱』。軍艦に運び込まれた木箱が消えたのは何故なのか? しかも、消えたはずなのに、なぜか実数自体は合っている。つまり、記録の改竄? それは何故? もしや、敵国スパイによる破壊工作が? そんな疑惑まで出てくる始末。そんな中、池崎は、水兵についてのある違和感を覚えて……
基本的には、その船の中で生活をする、という軍艦の在り方。その一方で、現代の会社とか、そういうものにも共通するような、一種のイベント。それが組み合わさった真相っていうのは、二つの意味で上手い。
また、近くを航行する僚艦から奇妙な信号が、というところから始まる『怪しの発行信号』。こちらも、まず疑われたのはスパイ。しかし、間もなく、水兵の一人が、自分と僚艦に乗った弟のやり取りである、と告白する。そして、弟からの連絡は、母が病に倒れた、と言うものだという。すぐさま、休暇を与えられたのだが、池崎は、その水兵の語った暗号の意味に解読法に疑問を抱いて……
こちらは、この時代ならでは、という感じだろうか。この真相の根本も、ある意味では現代でもありそうなものではある。あるんだけど、日本がまだ、日本列島以外にも領土を持ち、また、制度としてこのようなものが当然にあった時代、とならでは、と言った感じか。
そんな中で、戦いは段々と激化していき、日本は窮地に立たされていた。そんな中、オーストラリアから奪ったものの、反撃にあった孤立した舞台の救出に向かって……という5編目、6編目、エピローグ。そこまで、どちらかというと政治色とかが全くなかったのだけど、このエピソードに関しては、国際的な話へと発展。エピローグ、戦後となった日本で池崎が「実はあれは……」という形で謎を解くのだけど、国際政治の時代性を考えれば、こういうこともあるだろう。しかし、その時には、既に関係者の多くが戦死していて……という部分の余韻もある。物語の締めに相応しい話と言えるだろう。

No.5175

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0