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白銀の逃亡者

著者:知念実希人



「あなたも私と同じヴァリアントでしょ」 夜勤専門の救急医療室で働く純也の元に現れた少女・悠は、純也の正体を指摘する。4年前に発生した奇病の結果、生まれた人々を隔離する施設から逃げてきたという悠は、純也を反政府組織の計画に引きずり込んでいって……
一応、設定から言うと、4年前に発生したDoMSという病。致死率95%という驚異的な死亡率を誇る一方、そこで生き残ると、今度は驚異的な身体能力を持った肉体へと変貌させる。そして、その病が蔓延したころに、その罹患者が起こした強姦殺人事件により、現在、彼らは隔離施設での生活しなければならない、と定められている、
という設定で、その施設から逃亡してきた悠。そして、自分がヴァリアントであることを隠して、一般社会で生きている純也。それが、ヴァリアントを憎み、その存在を追う刑事・毛利から逃げながら……となるので、確かに「逃亡者」ではあるんだけど、あまり逃亡メインという感じではないんだよな。しかも、悠の兄であるという、上に書いた強姦殺人魔を脱獄させる。しかも、悠の兄・比呂士は、反社会組織とも結びついていて……となるから、逃亡の悲壮感とか、そういうのはちょっと少なかった気がする。巻き込まれた純也はとんだ災難だけど。
むしろ、物語のメインとなるのは、その隔離政策とか、そういう部分だろうか。
上に書いたような形で、ヴァリアントの隔離が法的に定められた。奇しくも物語は衆院選の時期。政権交代を果たしたは良いが、失政続きで、政権を失おうとする現与党は、この状況を利用し、隔離拡大をもって支持の拡大を図る。対して、4年前の首相は、そんな状況に違和感を感じる。しかし、ヴァリアントへの対策が弱腰と言う批判も高まる……。しかし、実際には、DoMウィルスは、人々が恐れているほどの感染力もなくて……
この辺り、ワンフレーズ選挙とか、そういうものがあるから実際にリアリティはある。また、専門家が持っている最新知と、そうではない一般の人々の持っている恐怖心の乖離とかも確かにある。例えば、日本における凶悪犯罪の減少と、しかし、人々の持っている「治安悪化」という印象とか、そういうのは沢山あるわけだし。そういう部分が面白かった。
ただ……結局、比呂士が行ったことって……確かに、そういう部分に一種の啓蒙は与えていると思う。思うのだけど、でも、やっぱりテロ行為、犯罪行為なんだよな(苦笑) 作中で語られるほど、綺麗な終わり方はしないんじゃないかな? というのは気になった。

No.5176

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