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歌舞伎町ゲノム

著者:誉田哲也



新宿の街に巣食う害虫を退治する「歌舞伎町セブン」。だが、仲間の一人を失い、活動を休止していた。そんなとき、メンバーの一人・ジロウは、恋人が強姦され、挙句に自殺されてしまった、という男と出会い……『兼任御法度』。
など、全5編を収録した連作短編集。
これまでのシリーズ(『ジウ』を含めた)って、長編エピソードだったのに対し、今回は、メンバーそれぞれの視点で綴られる短編作品。大ぶろしきを広げた割には、と思った過去の作品もある中、本作は、まさに仕事人的な印象で素直に楽しめた。
まさに、必殺仕事人、という印象なのは1編目。冒頭に書いた通りの粗筋なのだけど、婚約者を襲った相手はわかっている。被害届を警察にも出した。しかし、それは握りつぶされた。なぜならば、その犯人の親族には、元総理という大物政治家がおり、彼の圧力があったから。警察が手を出せないのならば……。シンプルな話なのだけど、こういうシリーズなのだ、というのがよくわかるエピソードになっていると思う。
歌舞伎町の元カリスマホストのお気に入りの外国人運転手が、母国へ帰る……という直前に殺された、という『凱旋御法度』も同様。外国人も沢山いる。勿論、問題のある人物もいるが、一生懸命に働いて、皆から愛されて……そんな存在も。そんな猥雑な歌舞伎町の空気の裏の事件ということでこちらも王道な感じはする。
が、そこからだんだんと雰囲気が変わっていって……いつの間にかメンバーに加えられてしまう掃除屋のシン。相手を殺した後、その後始末の専門家、ということで重要なのだけど、とにかく「汚い」現場ばかりを背負わされ、しかも、彼曰く、「雑になってないか?」と愚痴られる始末。そんな彼が主役の『改竄御法度』は……。ここまでは、シンプルに裁けない悪を、という形だったのだけど、たまたま助けた少女を巡ってのアレコレ。法律云々はともかく、裏社会のルールに則ったことが行われていただけ、というオチは、ただの義賊とか、そういうタイプではない話っていうのがよくわかる。
で、その話の中に、やっぱり『ジウ』シリーズの新世界秩序とか、そういうものの影が出てくるんだよね。5編目のラストシーンで、それを匂わせて終わり、とか、そういう部分もあるし。シリーズの中で、最も素直に楽しめた巻だった、っていうのはあるんだけど、やっぱり、『ジウ』の世界観とかにはちょっと馴染めていない、っていうのも感じた。

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