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夏へのトンネル、さよならの出口

著者:八目迷



「ウラシマトンネルって、知ってる?」 海沿いの田舎町・香崎。夏のある朝、高2のカオルはそんな噂を耳にする。そのトンネルに入ると、年を取る代わりに欲しいものが手に入る野だという。そして、それらしきトンネルを見つけたカオルは、5年前に亡くした妹が取り返せるのではないかと思いつく。放課後、一人でトンネルの調査を開始するカオルだったが、転校生のあんずが現れて……
第13回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞&審査員特別賞受賞作。
序盤で読者を引き付ける力がすごいな、これ。
ある意味、自分の住んでいたド田舎にそっくりな印象の街の描写とでも言うか……。駅の近くには、それなりに家屋などもあり、人もいる。でも、ちょっと離れれば人も訪れない山の中。野生動物と電車がぶつかって、なんていう「田舎の鉄道あるある」。また、高校という環境も、ある程度の区分けはあるにせよ、同じ学校に真面目な生徒も、いわゆる不良と言われるような存在もいる。そんな描写が、まず、いかにも「田舎町」という雰囲気を感じさせてくれる。そして、その中で、過去に妹を喪った、という主人公・カオルの過去。
元々、不安定な関係にあったカオルの家。それを繋ぎ止めていたのが、両親の「本当の」子である妹。カオルにとっても大事な存在であり、最愛の存在でもあった。しかし、それを自らの不注意により……。崩壊した家庭。母は家を後にし、父は抜け殻のように……。だからこそ、妹の存在に執着するカオル。
一方、東京から転校してきたはじめ。周囲に溶け込めず、浮いた存在でもある彼女。そして、彼女もまた、自分の夢があり、それを理由に家族を喪っていた。そして、そんな思いから二人は協力関係を結ぶことになって……
浦島太郎の竜宮城のように、時間の流れが異なる異空間。数分間が数時間にもなってしまうその空間にいるため、わずかな時間が、数日とかという時間の経過になってしまう。そんな状況を共有する中で繋がっていく二人。そして、それぞれの望みをかけた計画を実行するときになって……
別れた運命。しかし、その間のアレコレがカオルとあんず、両者の間にしっかりとあって……。ちょっと後半がダイジェストっぽくなってしまった感じはあるけど、しっかりと物語がまとめ上げれており、気持ちよく本を閉じることが出来た。

No.5199

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