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死体埋め部の悔恨と青春

著者:斜線堂有紀



苦労の末、大学へ入学した祝部。しかし、入学早々の飲み会の後、彼は暴漢に襲われ、返り討ちにしてしまう。途方に暮れた祝部の前に現れたのは、大学の先輩だという織賀。彼の車には、別の死体が乗せられており、彼は、秘密裏に死体の処理を請け負っているのだという。その手伝いをすることになるのだが、なぜか、その道中、その死体の奇妙な状況について推理を披露することになって……
物語の形式としては、4つのエピソードを重ねる形の短編形式なのだけど、間違いなく長編としての意味を持った作品だな。
物語のスタートは冒頭に書いた通り。暴漢を返り討ちにしてしまった主人公・祝部は、大学の先輩だという織賀に助けられることになる。そして、そのままなし崩し的に、非合法組織などが出した死体の処理を請け負う、という織賀の手伝いをすることに……。そして、その「仕事」の中で、その死体についての不可解な点についての推理合戦をすることに。
各エピソードで出てくる「なぜか指をすべておられている遺体の意味は?」「普通の中学校教師が、なぜ、ヤクザに狙われたのか?」というような謎。それぞれ、基本的には祝部の推理のみ、であり、実際にそうなのか? という点はわからない。けれども、それぞれの状況などから、納得が出来るか? という部分でのそれは、一種の日常の謎、安楽椅子探偵モノのような味わいになっている。そして、そんなやり取りを繰り返す中で、本来は異常なはずの状況に、祝部自身も慣れてしまうのだが、3編目、知り合いの死体の処理をすることになって……
そこまでのエピソードの中で、散々、祝部が感じる織賀の人間性。平然と人間の死体を処理する、という仕事を請け負う異常性。しかし、その一方で、授業スケジュールの組み方であるとか、人懐っこさであるとかは、ごくごく普通の大学生そのもの。そして、仕事の際に見える彼の流儀。そういうものを積み重ねていったときに見えてくる違和感……
この結末は、ある意味、なるべくしてなってしまった、ということなのだろう。異常な世界、というものに入らざるを得ず、しかし、そこへ違和感を覚えなくなってきたところでの苦すぎる結末。織賀と祝部。一時は、同志と感じ、しかし、やはり立っている場所は違っていた。そんなことを象徴する結末なのかな?
まぁ、個人的な要望があるとすれば、もう1編か2編くらいエピソードがあっても良かったかな? とは思う。良くも悪くもここに収録されているエピソードだけだと、起承転結がはっきりしすぎている気がするので。でも、最小限のエピソードで、作品をしっかりと完成させている、ということが評価できるのかもしれない。

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