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犯人に告ぐ3 紅の影

著者:雫井脩介



横浜の洋菓子メーカー・ミナト堂の父子誘拐事件。神奈川県警特別捜査官の巻島は、主犯格とみられる「淡野」という男を追っていた。そんな淡野は、鎌倉に潜伏し、小さなヤマを繰り返していたが、ある出来事をきっかけに引退を決意する。だが、そんな淡野の師匠は、彼に最後の事件を指令して……
前作で、「そこで終わるの?」という感じだったわけだけど、そこで取り逃した淡野と、巻島の対決となる第3作。第1作から第2作までが10年。そして、そこから4年弱。読者やそれを取り巻く環境は大きく変わっているけど、物語の時系列としては、第1作から1年も経過していない、という状況。その割に、テクノロジーやら社会問題やらが一気に現在にワープしていないかい? という部分があるのは気にしちゃいけない部分だろうか?
で、物語は、序盤はひたすらに淡野の現在が描かれる。老人を相手にした投資詐欺をしながら日々を過ごす淡野。しかし、その中で、ある事件をきっかけに自分の緊張の糸が切れた、ということを自覚し、引退を決意。だが、そんなとき、詐欺の師匠ともいえるワイズマンからある仕事をするよう指示されて……という形で進んでいく。前作で淡野自身についての掘り下げとか、そういうのが少なかった分、本作では、ということになるのだけど、冷静沈着だった淡野がちょっと小者っぽくなってしまったのは否めないかな? というのはある。しかも、その背後にワイズマンだの、ポリスマン(警察内にも、ワイズマンの弟子がいて、スパイ活動をしている)だのと大風呂敷を広げ、その部分については投げっぱなしと感じるところがあるし……
と、最初に気になった個所は色々あったりする。ただ、その実際の巻島との対決そのものは非常にスリリング。
ネタバレになるけど、淡野が狙うのは、警察の裏金。警察上層部にとっては、決して表にすることが出来ない金。その存在について調べ上げた淡野たちは、その金をひそかに奪取することを狙う。一方、巻島は、淡野を逮捕するため、ネット配信の番組へと出演。淡野への挑発をし、淡野専用の書き込み窓口を用意しながら対話を開始する。そこで、淡野は、現在、ある事件を起こすことを計画中と告げる……
巻島としては、淡野が何をしようとしているのかわからない。しかし、それを阻止せねばならない。一方、淡野に弱みをつかまれた警察上層部は、淡野に金を払うことを決意。しかし、淡野が逮捕されれば、裏金というスキャンダルと同時に犯罪者に金を渡した、ということまで明らかになり、一大スキャンダルに発展することは必至。勿論、淡野が公表しない、という可能性もないではない。しかし、それは、前作の誘拐の被害者と同じく信頼するしかない。となれば……
巻島としても、淡野からもたらされる内通者の存在に目を光らせ、さらに、周囲のおかしな行動も気になる。その辺りのスリリングさ、というのはやっぱり光っている。序盤は、ちょっと冗長さも感じたのだけど、ネット配信が始まり、巻島・淡野の対決が始まって以降、物語が面白くなって、そこからは最後まで一気読みだった。その辺りは流石と言わざるをえまい。
そういう意味で、読み終われば「面白かった」とは言える。
言えるのだけど、でも、ちょっと上に書いたような理由で、消化不良感っていうのも覚える部分がるのが勿体ない、とも思う。

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