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刑罰

著者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
翻訳:酒寄進一



全12編を収録した短編集。
ここのところの著者の作品は、短編……というか、中編くらいの分量で、なおかつ、結構、テーマ性などを重視したような作品集が多かっただけに、雰囲気としては初期の『犯罪』『罪悪』を思い出した。
そして、収録されたエピソード全体を通してみると、人が人を裁く、ということの限界とか、そういうものを感じる。
例えば、1編目『参審員』。他者に心を重ねすぎてしまう、という性格を持っている女性・カタリーナ。そんな彼女が、参審員に選ばれた。その裁判は、妻に暴力を振るって裁判にかけられた男。妻は、裁判にあたって夫の弁護を始めるのだが……。そもそもが自分には無理だ、として辞退しようとしたものの認められなかったカタリーナ。しかし、ルールはそれを許さず、そして、いざ、裁判の場では、調和を乱すもの、として処分されてしまう。そして、その裁判の後……。向き、不向きと言ったもの。そして、調和などと言ったもの。ある意味、法的には……ということなのだろう。でも、その窮屈なルールと、皮肉な結末ということが、そんなテーマ性を感じさせる。
個人的には、『臭い魚』。周辺の人びとから「臭い魚」と呼ばれ、忌み嫌われる男。色々なうわさが先行したその男のところへ、一種の罰ゲームとして行かされることになった少年・トム。恐怖を覚えながらも、男のところへ行ったトムだったが、彼は単に目が不自由で、貧しいだけの男だった。申し訳なさを覚え、男の元を去ろうとしたトムだったが、トムを男の元へ生かした仲間たちは、男を攻撃して……。偏見によって、勝手な恐怖心を覚えていたトムの後悔。そして、そんなトムに対してくだされた偏見……。僅か7ページあまりの分量ながら、凝縮されたテーマ性が込められていて、非常に読ませる内容になっている。
以前の作品の感想でも書いたのだけど、著者の暮らすドイツと日本では司法のルールとか、そういうものの違いがあるはずで、しかも、かなり淡々と描かれる作品なだけに「?」と思うような話もいくつかあった。それでも、僅か数ページのエピソードで、これだけ凝縮された話を書く著者は凄い!

No.5225

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