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ノースライト

著者:横山秀夫



一級建築士の青瀬は、信濃追分へと車を走らせていた。「あなたの住みたい家を作ってくれ」 そんな依頼に応えて作った渾身の家。施主一家も、とても喜んでいた……はずだった。しかし、その家は無人だった。電話だけが設置され、人が暮らした形跡はなし。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除いて……
著者、6年ぶりの新刊。
著者の作品と言うと、どうしても「警察小説」という印象があるのだけど、本作の主人公・青瀬は建築士。そして、そんな彼が、望まれて、そして、情熱をかけて作った家に住むはずだった一家が失踪している、という謎を追う形で展開していく。
とは言え、ただ、その失踪した一家を追う、というだけでなく、様々な物語が複合的に進展していく。そもそもの青瀬が、バブル時代に、その景気を謳歌し、しかし、その後の不景気によりすべてを失った青瀬。妻と離婚をし、ただ既定のものをそのまま設計する、というだけの日々。そんなとき、大学時代の旧友・岡嶋に拾われ、そんなときに来た依頼が、件のものだった。さらに、その岡嶋は、記念館建設を巡って動いていたが、ある疑惑が浮上して……
純粋に物語を進めるための「謎」として考えるなら、失踪した一家について、が一番と言えるだろう。タウトの椅子、とか、そういうものを含めて。そのため、しばしば含まれる青瀬の回想とか、そういうのが序盤は長いな、なんて思うところもあった。でも、物語が進んでいくうちに、その意味がどんどん作中になくてはならないものだ、というのがわかっていく。
バブル後、完全にそれを失った青瀬。そんな彼を立ち直らせるために仕組まれていたこと。そんな周囲によって、青瀬は甦ることが出来た。そして、そんな「代表作」を未だに持っていない岡嶋が目指したもの……。建築を芸術と言って良いのかどうかはわからない。規格品を企画通りに作って、というのも大事なことではある。でも、間違いなく、芸術としての側面がある。そんなものを作るのに必要なものは情熱。そんな情熱を復活させようと動いた人々。そして、その情熱に負けじと動き出そうとした岡嶋……。
物凄く遠大な、そして、見方によってはちっぽけな計画かも知れない。でも、そんなことにかけた人々の、これまた情熱が感じられた。

No.5237

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