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アンド・アイ・ラブ・ハー 東京バンドワゴン

著者:小路幸也



一進一退を続けるボンの容態に落ち着かない日々を送る堀田家。そんな中、研人の後輩で、写真好きな少年・水上が、不審な男に尾行されていて……(『秋』) など、堀田家の四季折々の事件を描いた短編集。シリーズ第14作。
正直なところ、各編、ミステリ仕立てになっているんだけど、各エピソードの謎そのものは結構、有耶無耶の中で終わっている。例えば、1編目、水上くんが、何者かに尾行されている。その前には、年上の少年たちにカメラを奪われそうになったことも。それはいったい、何なのか? 一応、水上くんが尾行されていた理由。カメラを狙われていた理由、っていうのは明らかになっている。なっているのだけど……では、水上くんがしてしまったものの正体は……「お知らせできません」で終わってしまうので……
そういう意味では、わかってはいるんだけど、堀田家に関わる面々のアレコレ。生き死にも含めて、っていうのを楽しむべき、というのを思う。明言はしていないけれども、半ば、女優業を引退している池沢百合江の、芸能界への別れ。我南人のバンドのドラマー、ボンさんの死。現在は、堀田家で暮らしている元女医・かずみの異変……。そういうものが今回も積み重なっていく。
その中で、いちばん、印象的なのは、かずみの異変、だと思う。
戦後間もないころ、戦災孤児として堀田家で預かってもらっていたかずみ。年を取り、再び堀田家に住むようになった彼女だが、最近は、ぶつぶつと何かを呟いていたり、ちょっとしたことでのミスも。彼女はいったい、どうしてしまったのか? かずみ自身が言っているように、ある意味で、年齢を重ねれば仕方がないところがある。それは、医者であった自身が一番、よくわかっている。だから……。でも、そういう覚悟はできていても、どうしても捨てられないものも。それを堀田家の女性たちに、後始末を頼んで……
ある意味では、過去篇である『マイ・ブルー・ヘブン』の後始末的な部分でもあるんだけど、想っている人がいる。でも、その言葉を表に出すことは出来ない。だって、その相手も好きだから。それを50年以上も抱えて生きていたかずみの心情。その切なさ、というのが最後の最後にすごく記憶に残る。

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