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ペンギンを愛した容疑者

著者:大倉崇裕



シリーズ第3作となる短編集。全4編を収録。
これまでの話は、容疑者=犯人、という構図で物語が進んでいたのだけど、今回は文字通りの「容疑者」、つまりクロとは思われているけれども……という話が多い。
例えば2編目の『ヤギを愛した容疑者』。中学校の教頭が殺害された。教頭は、学校で行われていたヤギとの交流授業を中止させようとしており、交流教室の主催者と対立していた。そして、その主催者は、現在、意識不明の状態にあって……
容疑者となった津浜は、ヤギの世話をしっかりとしており、その生態などにも詳しかった。その中で、交流教室も、しっかりとした形で行われていた。なのに、なぜ、教頭は、それを中止しようとしていたのか? アレルギーとか、小さな怪我をする事例も確かにあった。しかし、最大のきっかけとなったのは、ある事件……
須藤じゃないけど、ヤギと言えば……というある固定概念。そこから、ヤギを飼育していた津浜が見抜いたこと。そこから……。真犯人との決着の部分は、かなりの力技なのだけど、ヤギの世話の様子。交流教室の中止に至った経緯。そういうものを積み重ねていって、さらにヤギの生態などを鑑みて真相に至る過程が丁寧で、読み応えのある一編になっている。
物語の捻り方、という意味では、3編目の『サルを愛した容疑者』。キツネザルを飼っている青年の家で、その青年の元恋人が殺害された。警察は、青年を容疑者として逮捕した。そのサルの世話をするために訪れた須藤と薄が見たものは……
こちらも、最初は、青年が犯人? というところから、しかし、女性の遺体を巡ってのアレコレで話が二転三転。一旦は、一種の事故である、という形に落ち着いたと思ったら……。先の2編が、物語として一種のパターンとなっているからこその読者の思い込み、とか、そういうのもあり、各エピソードの順番というのも上手くハマっている話であると感じる。
1作目、2作目辺りでは、漢字の誤変換的なボケをかます薄とかに、結構、しつこいと感じた部分もあったのだけど、須藤の側も、その御し方とかを覚えたようで、今回は、その辺りの塩梅も丁度良くなってきたように感じる。また、薄も、すこしは自制心がでた、というか……(笑) 話的にも、短編の方がスピーディ感があって読みやすいし、これまでのシリーズの中で、3作目の本作が一番、素直に楽しめたように思う。

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