FC2ブログ

君の想い出をください、と天使は言った

著者:辻堂ゆめ



急性の脳腫瘍に倒れた夕夏。医師の態度から考えて、最悪の結果と受け取らざるを得ない。そんな絶望に涙する夜。真っ黒な服装に身を包んだ青年が現れる、自らを「悪魔」と名乗る彼は、大切なものと引き換えに命を救う、と持ち掛ける。その取引に応じた夕夏。腫瘍は良性に代わっていたが、2年間の記憶を失っていて……
形としてはミステリだけど、印象としては恋愛小説。
物語は冒頭に書いたようなところで始まる。2年間の記憶を失った夕夏。疎遠であった実家とのかかわりも復活し、そして、本人としてはタイムスリップしたかのような状態。銀行員、という仕事に復帰したものの、記憶は新入社員の状況であることから、周囲には迷惑をかけっぱなし。しかも、以前の自分は「できる」人間であったらしく、また、同僚らとの関係にも戸惑いが……
まず、その辺りのリアリティとでもいうべきもの。確かに、2年間、違っていたら……っていうのはあるよな。自分の職場でのことを考えても……だし(例えば、今日、記憶が2年前のものになったら、消費税率が違っている、っていうだけでも大きく戸惑いを感じるはず)まして、自分も、一応、指導係みたいなことをしているけど、そういうところでも……。結構、引っ込み思案というか、そういう部分も含めて、こうなりそうだな、と共感することが出来た。
そんな戸惑いを覚える中、アフターフォローとして現れる悪魔こと水上。ただ、夕夏の様子を聞き、というだけの彼は本当に「悪魔」なのか? そして、自分が失った「大切なもの」とは……
まぁ、謎としては、その部分なのだけど、読んでいるうちに、「きっと……」っていうのはわかると思う。思うのだけど、その予想通りになってくれることで、良かった、と思えるのが何よりじゃないかと思う。家族に関するいざこざとか、そういうところも、ちゃんと解決を迎えているし、安心して読み終えることが出来た。

No.5269

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。


スポンサーサイト



COMMENT 0