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人さらい

著者:翔田寛



静岡県浜松市で小学生の村木千夏ちゃんが誘拐された。犯人は、千夏の母に身代金を持たせ、タクシーに乗るように要求する。奇しくも祭が行われる中、犯人の翻弄され、身代金を奪われ、同時に千夏は無残な他殺体をなって発見される。県警の日下は、その犯行方から、村木家に対して、強い恨みを持った者の犯行と睨むが……
かなり色々と物語を動かした形の話で来たな~……というのをまず思った。
誘拐事件が発生し、そこから間髪入れずに犯人とのやりとり、身代金を巡っての攻防戦。そして、失敗……。序盤で、いきなり物語が大きく動き、そこからは、その犯人は誰なのか? という形で物語が進む。被害者である村木千夏。その父親は、銀行の支店長であり、その出世の裏で数多くの貸しはがしなどで恨みを買っていた。一方、その現場で爆死したタクシー運転手。彼の経歴にも不可解な部分が。さらに、被害者の母親が見ていた中で入れ替わった身代金は? 3つの謎をメインに物語は進んでいく。
この作品の特徴は、すり替えられた身代金、という本格ミステリ的な部分を持ちながらも、そこはオマケ的な形になることかな? まぁ、密室の謎がっても、犯人が誰かさえわかれば、あとは犯人を締め上げれば、というのは、本格ミステリの(無能な)警察が言うことだけど、逆にそれを本筋にして、っていうのは意外と斬新かも知れない。
現場で爆死したタクシー運転手。個人タクシーの運転手で、真面目な学生であったという過去の彼。しかし、恋人には奇妙な理由で別れを告げ、現在は金にも困っていた、という。一方、被害者の親による貸しはがしにより、一家心中をしていた男がいた。しかも、現在は行方不明。この二人が首謀者? しかし、両者はどうやって繋がった? しかも、それだけでは納得のできない部分も……。身代金すり替えのトリックは、かなりアッサリとしたものなのだけど、正直なところ、そこはあまり気にならなかった。
その上での、犯人たちの動機。これはかなり切ない。真面目だからこそ、陥った深淵。ちょっとした悪意によって奪われた命。そして、犯人たちの間にもあった連鎖。悲しみの連鎖によって起こされた事件。その中で、こんな形で、その贖罪を果たした人物の存在が印象に残る。
まぁ、地方都市とは言え、関係者の関係性が狭すぎるだろう、という気はするのだけど、それを言うのは野暮だよね。

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