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神とさざなみの密室

著者:市川憂人



窓のない閉鎖空間に閉じ込められた二人の男女。政権打倒を標榜する政治団体で活動する凛。外国人排斥を主張する団体で活動する大揮。二人に直前の記憶はなく、眼前に横たわる他殺体。誰が、何の目的で敵対する二人を閉じ込めたのか?
これまでの、シリーズとは全く趣を異にする作品。読んでいて、モデルはあの人、あの団体、っていうのが何となく頭に浮かぶなど、現実のアレコレを題材にした作品だな、というのを感じる。
それ故に、主人公二人の状況、思想とかが多く描かれるのだけど、とりあえずは、それをさておいて、シチュエーションの魅力。先に書いたように窓もなく、密室状態に置かれた二人。その部屋には、他殺体があり、このままでは殺人の疑いをかけられてしまう。勿論、どちらも、自分がやったわけではない。では、なぜ、そのような状況に置かれているのか? そして、なぜ、このような不可解な状況が作られているのか? というのが最大の謎となる。
これ自体は、かなり面白い。それぞれ、記憶に残っているまでの状況を精査し、そこまでの行動を考察する。二人にヒントを与えるのは、WEB上で行動をしている「ちりめん」という名のユーザー。互いに敵対する団体にいるが故の反発と、しかし、真相を知りたい、という共通した想い。その中で、他殺体を巡っての何度かあるひっくり返し……と、本格ミステリとしての魅力は十分にある。
ただ、どうしても題材が題材なだけに、それぞれの政治的な主張。主人公それぞれの置かれた状況というのが表に出てくるだけに、共感しづらい、というところもある。まぁ、全部否定するわけではないのだけど、それぞれ、かなり極端な状況があるし、しかも、言っては何だけど、(実体かどうかは別としての)ステレオタイプな上に、黒幕となる人物と、そこへ導いた存在の関係性が強引に思えるし。その点はちょっと気になる。
密室を巡ってのアレコレは面白いのだけど、それ以外の部分が、結構、評価が分かれそう、という風に感じる。

No.5288

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