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閻魔堂沙羅の推理奇譚 金曜日の神隠し

著者:木元哉多



母は殺人を犯した。そんな秘密を隠しながら、建築デザイナーとして成功を収めつつある律子。だが、娘・美久との関係はイマイチしっくりと来ていない。そんな律子の元へ現れたのは、出所した母に金を貸した、という男。そして、その男から逃亡中の母。築き上げてきたものが崩れそうな中……
シリーズ6作目で、初の長編。ただ、長編とはいえ、物語の構成は、これまでの短編のそれと同じ。主人公の日常などを数多く描き、その結果、主人公は何者かに殺害される。そして、沙羅と出会って、真相を上手く喝破すれば生き返ることができる、という推理ゲームに挑戦することになって……というもの。
今回の主人公、律子の場合は、とにかく、日常が壊れていくのではないか、という恐怖感。だんだんとその包囲網が狭まっていくスリリングさ。それに優れた話と言える。
明らかに自堕落で、幼い自分に対しても虐待をつづけた挙句、殺人犯として逮捕され、一時期はマスコミを騒がせた母。叔父夫婦に引き取られ、必死に頑張り、建築デザイナーとして注目を集める存在にまでなった。しかし、そんな中で娘とはすれ違い、会話すらない状態。何とかしたい、そう思っているところに舞い込んだのは、出所して、やはりトラブルを抱えた母に関するアレコレ。
母に金を貸している、という川澄という男は、「律子の母を探している」という名目で、隠していた過去を周囲へと仄めかす。そして、母は、とにかく金が欲しい、と律子の前に……。さらに、離婚した夫は、娘の現状を知り、親権を渡せと迫り始める。そんな中で、律子は思わず母を殴り倒してしまうが……。悪い時には悪いことが重なる、じゃないけれども、母親の存在が、どんどん律子の現在を脅かしていき、追い詰められていく、という息苦しさは長編だからこそ、だと思う。
そして、そんな中で律子は何者かに刺殺されてしまって……となるのだけど……
ここはちょっと小粒かな? と。沙羅が現れて、推理ゲームになって、というのが3分の2を過ぎたあたりから、と、かなり後の方になってから、だし、犯人が誰で……とか、その部分だけあるのならば、娘の親権を巡ってのアレコレとか、会社での地位を巡って、とか、そういう部分についてはカットすれば短編くらいの分量にしても成立するはず。メインの謎となる部分についても、その時の関係者は……と考えると絞り込みが出来るし(だからこそ、この物語の基本線である、主人公が知っていたことで、真相に辿り着ける、というフェアさではあるのだが) この辺りは、短編のときの味わいに近い感じがする。
長編だからこそ、の息苦しさとか、そういう部分は十分に楽しめた。ただ、読み終わると、何か、いつもの味わい、と感じるのは良いのか悪いのか……

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