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探偵はもう、死んでいる

著者:二語十



「あんたが名探偵?」 放課後、見ず知らずの少女に恫喝されることとなった君塚君彦。彼女、夏凪渚は、「自分の探している人を探してほしい」という頼みごとを受ける。そんな頼みごとを「探偵にはなれないが、助手としてならば」と引き受けることにした君彦だったが……
第15回MF文庫Jライトノベル新人賞・最優秀賞受賞作。
……実を言うと、本作については、書籍として刊行される前、担当編集者様より、帯などの推薦コメントなどを書いていただけないか? という形でメールをいただき、一足早い段階で読んでいた作品だったりする。
で、物語としては、巻き込まれ体質である君彦は、かつて、名探偵であるシエスタの助手として数々の事件に巻き込まれてた。だが、そんなシエスタは1年前に死んでしまった。そんな中、夏凪が現れ、彼女の「助手」として事件に巻き込まれていくことに……。という風にはなるのだけど、探偵モノのようでいて、推理とか、そういうものはあまりなく(一応、ひっくり返しとかはあるけど、アリバイがどうとか、そういういわゆる本格モノというわけではない)、しかも、相手が人造人間であり、異能力バトルとかそういう面もある。
この作品の最大の長所は、やはりタイトルにもある通りの「探偵はもう、死んでいる」という部分なのだろう。勘の良い人であれば、冒頭の粗筋で、夏凪が探している人、というのが何なのか? についてうっすらと想像できると思うし、実際、その通り。ただ、その中で綴られる君彦とシエスタの関係性。それを踏まえた上での、夏凪、さらに、その後の事件で知り合うことになる面々とのアレコレが心に残る。
巻き込まれた形でシエスタの助手になった君彦。事件になると、何も言わずに君彦を巻き込み、時に危険にも、ということもあった。でも、そんなシエスタと駆け抜けた3年間というのは、間違いなく充実した日々だった。そして、同じように夏凪の助手となってからの出来事……。「探偵」としては駆け出しだし、頼りない夏凪。そんな彼女をフォローするからこそ、シエスタとの思い出も甦り、そのシエスタの想い、というのが明らかになったときに……
勿論、この作品の舞台設定とか、そういうのはかなり特殊なものではある。実際に、こんなことを経験する人はいないし、また、シエスタとの別れのようなことを経験している人もほとんどいないことだろう。でも、例えば、学生時代に打ち込んでいた部活動とか、生徒会とか、そういうところでの苦しかったけど、大変だったけど、でも、後で考えると楽しかったなぁ……なんていう風に思い出すことがあると思う。それに似た感傷を覚えた。
同じ道を辿ることはなくなった二人。でも、共にいた時間は変わらない。悲しさも寂しさもある。でも前向きになれる。そんな結末の余韻が胸に残った。

No.5301

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