FC2ブログ

ノワールをまとう女

著者:神護かずみ



様々な企業のトラブル処理を担当する奈美は、ボスである元総会屋の原田の指示もあり、大手医薬品メーカー・美国堂に対するデモの対策を任される。かつて、反日発言をしていた韓国企業社長の役員就任に対するデモ組織へと潜入し、リーダー・エルチェについて調査を開始する奈美。だが、そこでエルチェから同士として紹介されたのは、同じ児童養護施設で育ち、現在は「恋人」として同棲する雪江だった……
第65回江戸川乱歩賞受賞作。
江戸川乱歩賞というと、公募文学賞で、新人作家のデビューの場、という印象が強い賞だが、本作の著者は、既に小説家デビューを果たして、何作か発表している方。そういう意味では、第54回の翔田寛氏に似た印象か。ついでに言えば、著者は歴代の乱歩賞受賞者で最年長らしい。
で、物語としては、「本作の謎はこれでございます!」というのが出て、その謎を解くべく動くうちに……というタイプの作品ではなくて、デモを鎮静化させるための工作をする、というスパイもののような印象を受ける作品。勿論、その中で不可解なことも起きるわけだが……
印象としてはハードボイルドモノに近いのかな? 工作員的な活動を続ける奈美。その中で、唯一、心を許せる「恋人」が雪江。フリーのプログラマであり、自分とは違う世界に生きているはずの彼女がなぜ、デモに参加しているのか? そして、そんな彼女はなぜ、不可解な死を遂げることになったのか? 自分自身が、このような生き方をするようになり、自分の手で人を死に追いやってしまったことがある、という過去。自分の親しくしている飲食店の女将さんが自ら命を絶ったのはなぜか? そして、自分をこの世界で生きられるようにしてくれた原田という男……
ある意味では、裏社会の世代交代というか、時節の変遷と言うか……そういうものがテーマなのかな? かつて、大きな存在感を持っていた総会屋。しかし、コンプライアンスの変化などの中で、それ自体が否定されるものとなった。そんな中で、師を裏切った原田。そんな原田も年を取り……。そんな部分が印象に残った。
ただ、雪江の死の真相は……どうなのかな? 理屈ではそうなのかもしれないけど、これ……何か、無理がある気がするのだけど……。そこは気になったところ。

No.5302

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0