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虎を追う

著者:櫛木理宇



30年前に起きた『北蓑辺郡連続幼女殺人事件』。亀井戸、伊与という二人の男が逮捕され、死刑が確定し、事件は終わった……はずだった。その事件を担当し、ほのかな違和感を覚えていた栃木県警捜査一課の元刑事・星野誠司は、亀井戸の病死を契機に調べてみようと思い立つ。警察官を引退した星野は、孫の旭、その友人・哲らの協力を得て、SNSなどを用いて、「事件の真相をリアルタイムで拡散する」という形で世論を動かし始めるが……
いや~……面白かった。
物語は、冒頭に書いた通りなのだけど、そもそも犯人の人物像はどうだったのか? どちらも少年時代に事件を起こした過去があり、前科のある人間を積極的に雇っていた会社で働いていた二人。しかし、経営者の交代で職を追われ、日雇いで過ごす中、貧窮し、窃盗を繰り返すようになっていた。言葉は荒いが、しかし、筋の通った行動を見せていた亀井戸。心の弱さなどもあり、単独でそんな大事件を起こすとは思えなかった伊与。どうにも、残虐な犯人像には当てはまらない。一方で、同性愛を周囲に疑われながらもなぜか伊与と行動を共にしていた亀井戸。なぜ、亀井戸は自分が困窮してでも伊与を庇っていたのか? さらに、そんな調査をする中で現れた、真犯人を名乗る者からの手紙。解決した事件をほじくり返すな、という警察からのプレッシャー。
物語の主軸となるのは、当時の関係者に聞き込みをして、新たな発見をして……というのを繰り返す形ではあるのだけど、SNSでの拡散を巡ってのアレコレ。ネットでの拡散だからこその、WEB上での賛否なども多くなるし、あやふやな情報なども多い。その中での様々な反応。さらに、調査の中心人物である星野、旭、哲と言った面々の抱えた事情などが程よく組み込まれており、飽きずに読める、というのも上手さを示していると思う。そして、そのような中で明らかになっていく、真犯人の輪郭。そして、亀井戸自身の事情……
劣悪な環境。持って生まれた障害。出世欲、保身欲。そして、ゆがんだ性癖……。これらが全て加わって、と作中に出てくるキーワードが全て繋がっての真相へ、という構成も相まって、完成度が高さが光る。ただ、作中で出てくる法解釈というか、説明と言うかは、そういう意味だったっけ? ってのがあったりしたけど。

No.5305

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