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鬼とめおとの古物商 アンティークに思い出をこめて

著者:藻野多摩夫



大磯にたつ鴫沢古物店。看板も出さず、古いものをひたすらに集める鬼である店主の鬼蔵と、しっかり者の妻・渚。古い物には魂が宿る、というが、そこで扱われた物について、奇妙な出来事が起こって……
と言う形の連作短編集。
まず思ったのが、非常に綺麗な話、っていうところだろうか?
昭和末期の時代を舞台とした作品で、義母との関係が上手くいかない少年が手にした真空管ラジオ。シングルファザーの父との関係に悩む少女が持つドールハウス。そして、鬼蔵と渚のなれそめを描いた話という形。
「道具は、使われてこそ美しい」
ある意味では、そこから始まっているのかな? と……。愛着があるからこそ、そこに想いが生まれる。そして、道具にも……。
特にそれを感じるのは、3編目。鬼蔵と渚の話に集約されているかな? 幼いころからやってきたピアノを諦め、家を飛び出した渚。そこで、声をかけられたのは鬼だという鬼蔵。そして、その鬼蔵と、亡くなった女性の遺品から夫婦茶碗を探すことになって……。勿論、どんな道具であっても使い込んでいれば傷もつくし、壊れてしまうこともある。特に、日常的に使う食器などは……。そんな中での、その夫婦の想いが込められた茶碗。僅かな時間しか共有していなかったが、しかし、想いは強かった。そして、人よりも遥かに長い時を過ごす鬼蔵にとっても、他者との出会い、別れは……。丁度、道具が傷ついていくのと同じように……。でも、それが一つの味となって美しさへ……
電撃文庫で出していた作品とは違い、派手さはあまりないのだけど、その分、落ち着いた、しっとりとした読後感を覚えた。

No.5308

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