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絞首商會

著者:夕木春央



和洋入り乱れる大正の東京。血液学の大家・村上博士が殺害された。不可解な点は3つ。遺体が移動させられていたこと。カバンの内側が、血に濡れていたこと。そして、遺族は警察ではなく、かつて村上家に押し入った元泥棒に解決の依頼をしたこと。秘密結社・絞首商會ともかかわりがある、と言われる村上博士の死の真相は……
第60回メフィスト賞受賞作。
一言でいうと……すごく読みづらかった。
っていうのは、とにかく、物語が淡々と進行していき、しかも、序盤は物語がどういう方向へと向かうのかよくわからないから。
第1次大戦の余韻も残る時代。その中で、大戦などを陰から操っていた、とされる秘密結社。無政府主義などの思想が跋扈し、そういう思想とも近かったとされる村上博士。しかも、同じ家で暮らしていた親族もまた、少し前に死亡しており、病ではあるがうさん臭さを覚える。さらに、何者かに襲われる関係者。秘密結社による刺客なのか? それとも……
出版社のサイトなどの作品紹介では、事件の容疑者とされる者たちが、なぜか熱心に解決しようとしている点が、とあるが、確かにその謎はある。さらに言えば、それなのになぜか警察に任せようとしない、という点も……。バラバラに綴られているエピソードが、そんな謎によってまとめられていく。そして、その熱心さの理由が……という点でのアイデアは確かに魅力的。そこが評価されたのだろう、というのはわかる。大正時代で、なんていう時代設定も、当時でなければできなかったであろうことも。
ただ……どうしても、視点が色々とバラけてしまったりするので読みづらく、厭世家の探偵・蓮見が事件に対してあまり熱心でない、というのも含めてちょっと話に入り込みづらかった。

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