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ホテル・ウィンチェスターと444人の亡霊

著者:木犀あこ



都心に建つ、老舗ホテル・ウィンチェスター。創業90年を超えるここには、人間だけでなく、様々なモノがやってくる。そんなウィンチェスターでコンシェルジュとして働く友納は、ありえないトラブルに振り回されながらも、最高のおもてなしのために奔走する……
そんなウィンチェスターでの事件を描く連作短編集。全4編を収録する。
著者の作品を読むのは、デビュー作以来。そのデビュー作について、心霊現象とかは起こるけれども、「怖さ」は殆ど感じなかった、という感想を書いた。そして、本作も作風としてはそれに似ている、ということは言える。
というのも、粗筋でも書いたように、物語として、このホテルには「人でないモノ」。つまりは、亡霊とか、そういうもおが数多く住み着いている、というのが前提。主人公である友納の周囲には、常に傍らにいてゴチャゴチャと話しかけてくる(勿論、友納にしか察知できない)「嗤い男」とか、ついつい色々なモノを盗んでしまう「スニファー」なんていうのがいて、そういう存在とやりとりをしながら不可解なトラブルの真相を探っていく、という形で綴られていく。
ということで、心霊現象そのものは、怖くない。ただ、それぞれの事件はかなり陰惨なものだし、現象そのものは解決したけれども……という後味の悪さが印象的。
例えば1編目は、客室で突如、血が滴ってきた、というところから始まる。なぜ、何もないところから? 調べるうちに、他にも突如、モノが現れる、という事象が起きていたことが判明。そこから、現象そのものが全く反対であることがわかり、そして、その上で……。現象そのものは判明したけれども……という余韻が印象的。
そんなのが最も強烈なのは3編目。54年前、ウィンチェスターで起きた霊能者の変死事件。火を起こすことが出来る、という霊能者が、ショーで失敗。しかし、その後、部屋で発火をし、足首を残して全て死亡してしまった。そんな事件の現場を、その事件の生き残りである女優がTV番組の撮影で訪れて……。女優の置かれた陰惨な子供時代。そして、こうだと思われていた事件そのもののあり方がひっくり返って……の鮮やかさと、その上での後味が印象的。
で、そんな上で4編目はちょっと美しい形で締められて、それまでの後味の悪い物語がちょっと浄化されるような……
キャラクター同士の掛け合いとかは明るく、でも、事件そのものは結構、陰惨で……。そして、1冊の本としての構成もまとまっている。すごく良かった。

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