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さよならの儀式

著者:宮部みゆき



全8編を収録した短編集。一応、テイストとしては近未来、SF設定というものを用いた話である、ということになるだろうか。ただ、そのSF的な設定があっても、いや、設定があるからこそ、現代の社会問題などをより際立たせているのかな? と言う感じがする。
例えば、『戦闘員』。毎朝の散歩を日課にしている老人・達三。ある朝、彼は、防犯カメラを破壊しようとしている少年を発見する。その場は、少年を叱り飛ばして終わった話だったが、その事件をきっかけに、町中に防犯カメラがあることに気づく。そして、少年と話をする中で……。正直、「ここで終わり?」と言う感じの終わり方ではある。あるし、また、この作品の設定は突飛ともいえる。けれども、防犯などのために、というカメラが悪用されるリスクとか、そういうのを十分に考えさせられる。
物語として印象に残ったのは表題作かな? 家事や介護などをするロボットが一般的になった社会。老朽化したそれを処分する施設に勤める主人公の元に持ち込まれたのは……
ものに対する感情移入。こういうと何だけど、例えば、人形とか、ぬいぐるみとかに感情移入をする人、というのは多い。また、ペットを家族に、なんていう人も多い。そんな中、ロボットが出てきたら……。見た目は人間そっくり。AIなどでコミュニケーションも可能。実際、目の前で、人間と同じように動いている。けれども、老朽化の影響ははっきりとある。むしろ、動くからこそ、危険である。主人公は、その危険性を感じているが、しかし、持ち込んだ側は納得しない。そんなやりとりの末で、主人公が願うのは……。実際にこんなことが増えそうだ、というのを感じざるを得ない読後感だった。
ちょっと異色だったのは『聖痕』。調査員である主人公の元を訪れた一人の男。男が依頼したのは、息子のことについて。離婚した妻に引き取られ、劣悪な環境で育った息子。その結果、息子は、母とその夫を殺害し、当時、センセーショナルに報じられた。少年院での時を過ごし、現在は真面目に生きている息子だったが、自分の過去の事件についての情報を調べたところ……
これは、SF設定というよりも、今現在、現実に起こり得ることじゃないか、という気がする。WEB上に溢れる様々な情報。真偽怪しいものもあるが、しかし、そんなセンセーショナルな事件だからこそ、それを崇拝する人々まで現れて……。実際、こういう事件において……っていうのはこれまでにも起きたことだし……。これに関しては、SFじゃなくて、素直に社会問題を描いた話だと思う。
と、ここまで書いてきて、SFと現代ものの差って何だろう? なんて思えてきた……

No.5352

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