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著者:赤松利市



大阪でニューハーフ店を営む桜。63歳になった彼女は、23歳で、同じくトランスジェンダーでもある沙希を娘のように可愛がりながら、慎ましい生活を送っていた。そんな桜の前に現れたのは昔の男・安藤。FXで大きな利益を上げている、という安藤は、自分に投資の運営をしないか、と持ち掛けて……
第22回大藪春彦賞受賞作。
凄くひきこまれた。
冒頭の粗筋だけだと、どういう話なのかわかりづらいので、もう少し先まで書くと……
安藤は、桜にとっての昔の男。しかし、自分を捨てて、女性と結婚をした相手でもある。そんな安藤が自分の前に。何をいまさら……そうは思いつつも、しかし、安藤のことが気になって仕方がない。また、還暦を過ぎ、自分の健康などにも不安を抱く日々。その中での老後資金は心もとない。ならば……。しかし、そんな安藤の存在を快く思っていない沙希。安藤を巡って諍いになった挙句、桜が安藤に預けようと思った金をもって失踪してしまう。桜は、安藤と沙希を追うことに……ということになる。
SNSに、まるで自分を追ってこい、とでも言うかのように残される沙希の現在地。当然、桜は安藤とそこへ向かうわけだが、その中で見える安藤の暴力性、短気さ、そして、胡散臭さ。沙希が言っていた通り、この男は……。そういう思いを強くするが、しかし、離れることは出来ず、しかも、時折見せる安藤の弱みに、自分が支えてやれば良いのでは? なんていう甘い考えも浮かび上がる。虐待によるマインドコントロールとか、そういう部分もあるんだろうけど、桜の、しっかりしているのか、そうではないのか? そういう心情描写が凄く生々しい。
ただ、これだけなら、主人公がニューハーフである、という必要性はない。女性でもよいはず。しかし、その旅先、沙希の過去なども出てくる中で、しっかりと、ニューハーフである、という面も意味を持っているのが印象的。自分が、ということを家族などにも言えず、日陰者としての人生を過ごしてきた桜。そんな桜にとって、自分のことを家族に打ち明け、家族も認めてもらっている沙希は幸せじゃないか、という思いを抱いている。しかし、沙希にとっては……。「ちゃんと理解しているよ」 これは、確かに、幸せに見えるかもしれない。でも、女として生まれた人が、周囲の人に「君が女性だってのはわかっている」なんて言う風には言われない。当たり前のことだから。攻撃はされない。でも……という無言のプレッシャーの息苦しさ。そして、安藤との旅の中で桜自身もそれを自覚していく……。そして……
そんな中で沙希とも再会、和解をし、安藤の手を離れることもでき、今後のことへ……となっていって……での結末……
これが、うーん……
なぜ、桜はそういう動きをしてしまったのか? ある意味、分かっていても……と言うの部分が桜の弱さだった、ってことなのかもしれないけど……。なんか、最後がちょっと腑に落ちなかったな……とも感じた。

No.5357

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