著者:山本巧次


ロシアの武装商船の船員が日本に漂着。一度は捕らえたものの脱走してしまった。江戸と東京での二重生活をするおゆうらは、江戸市中に侵入した可能性がある、ということで緊急配備に召集される。口外禁止により、捜査もままならない中、その船員・ステパノフの移送責任者の配下が死体となって発見され……
シリーズ第6作。
ある意味、これまでで一番、地味な形で話が進むエピソードになっている気がする。
粗筋で書いた通り、逃亡した外国人の捜索から物語は始まる。ただ、捜索をする、と言っても写真とかがあるわけではないし、そもそも、幕府にとって外国人が、なんてことは口外できない。ただ、大柄で怪しい奴を視なかったか? という聞き込みばかり。また、その後、そのロシア人をとらえることが出来たものの、幕府側の庇護下に入ってしまい、接触そのものも制限されてしまう。抜け荷疑惑などが湧いてくるものの、捜査そのものは遅々として進まない……
今回、どうして「地味」と感じたか、というと科学捜査という部分がどうしても地味なものになりがちなため。
途中で起きた殺人の凶器らしきものを科学鑑定する、とか、そういうところはあるんだけど、防犯カメラとかがないから、その映像解析をする、とか、はたまたDNA鑑定をするとか、そういうところに持っていくことが出来ない。僅かに、盗聴器を仕掛ける、とかその程度。勿論、実際の、現代の警察の捜査とかもそういう地味な部分の積み重ね、ってところはあるんだろうけど、江戸時代という舞台ゆえにより、そういうものがしづらい形が強調された形になったのかな? と感じる。
ただ、逆に言うと、おゆうのステパノスに対する接触とか、そういうところで地道に捜査を進める過程が楽しめた、ともいえる。物証とか、そういうもんがないからこそ、ちょっとした行動の違和感とか、そううものを積み重ねる。そして、現代のように様々なデータなどがない時代だからこその人間関係のひっくり返し。タイトルにある「科学捜査」が出来ないが故の描き方と言えるのだろう。
まぁ、真相とか、その辺りは、結構、荒唐無稽な感じはするんだけど、それは小説だし、これはこれで良いのかな?
その上で、毎回、最後に出てくる、おゆうを巡る話。鵜飼と宇田川が連戦状態になっていて、そこに笑った。
No.5361
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