fc2ブログ

ドライブインまほろば

著者:遠田潤子



奈良県南部の山中を通る旧道沿いで、祖父母の経営していたドライブインを再開した比奈子。母との関係に悩む彼女の元に現れた幼い兄妹。「夏休みが終わるまで、ここにおいてください」という兄・憂の訴えを春秋の果てに受け入れる比奈子だったが、憂は思わぬことを独白し……
という風に書くと、比奈子視点で綴られる物語のように思えるけど、そうではない。
物語は、冒頭で、憂が義父を殺害する、というシーンから始まる。憂は、妹を連れて逃亡。やがて、彼が辿り着いたのは、ドライブインまほろば。比奈子の経営する場所。そして、憂の伯父で、援交クラブを経営する銀河は、憂の持ち去った顧客リストデータを追い、甥を追いかける……。そんな三者の視点で綴られていく。
物語のテーマとしては、親子、という関係なのかな?
比奈子は、結婚し、ようやく生まれた娘を母の運転する車の事故で喪った存在。その過程で、夫とも離婚し、原因となった母は、自分を心配するように振る舞いつつも、孫への贖罪という名のもとに自分らに関わろうとする。それは、一人になりたい、という比奈子にとっても鬱陶しいと感じられる存在。
一方、銀河にとって、親とは、自分を捨てただけの存在。彼にとって、家族とは双子の弟・流星だけ。だが、その弟が、なぜ憂の母のような女に入れ込んでいるのか理解に苦しむ。そして、内縁関係の慶子が自分の子を産みたい、ということも……。そして、憂がなぜ義父を殺したのか……
親子の形は様々。流石に流星、憂父子のような関係っていうのは稀だとは思う。けれども、そういう存在もあるだろう。まして、比奈子の母などは、ある意味で悪意はないのだろうけど、でも、だからこそ自分や相手の気持ちを汲むことが出来ないという存在もいる。だからこそ、拗れてしまう。そんな関係にどこか共感する部分とかがあり、引き込まれた。そして、そんな中で一つの希望となるのが十年池という存在……
最後がちょっと綺麗纏まりすぎな気がするけど、それは物語だし、こんなものなのかな? と。息苦しさを感じつつ、でも、先が気になる物語だった。

No.5373

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0