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ザ・ロイヤルファミリー

著者:早見和真



父を亡くし、心に穴が開いた税理士の栗須は、ビギナーズラックで当てた万馬券が縁で、勝ち馬の馬主で、人材派遣会社の社長・山王に気に入られ秘書となる。山王の馬に関するマネージメントに関わる中、栗須は馬主の光と影を知ることになり……
2019年度JRA賞・馬事文化賞受賞作。
競馬はよくブラッドゲームと言われるけれども、それは、親から子へ、そして、その子へ……と血統が紡がれていく。だからこそ、「あの馬の子供が……」とかって馬を応援していくことになるし、また、「父はこうで、母はこうだったから……」と予想のファクターなどにもなる。そして、それは馬主という立場でも……
主人公・栗須が使えることとなった社長・山王。人材派遣会社の社長で、とにかく派手好き。家族からは道楽に……と言われながらも多くの競走馬を所有し走らせている。しかし、目立つということが周囲からの反感を買うこともあり、良くも悪くも周囲からは目立つ存在。なんか、表紙の男性の絵から、高額馬を買いまくっていた2人の某オーナーを足して2で割ったような印象を受けた。
物語は、そんな山王との出会い。その競走馬のマネージャーとして駆け出すところから。とにかくワンマンで、我の強いオーナー。しかし、一方で、馬に対する愛情はこの上ない。しかし、自ら言うように「馬を見る目がない」ため、高額馬を購入したは良いが……と馬鹿にされることも。そして、そんな山王のモットーとしては、馬を見る目はないが、人を見ることはでき。だからこそ、人に投資をする、というもの。そんなモットーの元、栗須の元恋人である加奈子の実家で生産された一頭の、血統的には目立たない馬・ロイヤルホープを購入して……
「物事には流れがある」という表現の通り、その一頭の馬との出会いにより上昇カーブを描いていく山王の馬主としての人生。しかし、頂点へとなったと思われたときに……。山王のこれまでの人生。その中で、栗須に「裏切るな」と言いつつ、山王自身が信じていなかったことへの苛立ち。はっきり言って、周囲にいる人間からすれば、山王という人間のそばにいたら……と思う部分はある。けれども、そのパワフルで、どこか泥臭くて……というキャラクターは、惹かれれば離れられないものなのではないかと思う。
そして、物語は第2部へ……。山王は死に、それを受け継いだのは……
感想の冒頭に書いた血統が紡がれるから、という部分。競馬の場合はサイクルが短いからより、っていうのはある。でも、それは実は人間でも同じこと。父の夢を……。そう思うが、しかし、世代も考えも違う存在。だからこそ、引き継いだとしても何らかの軋轢がある。それは、見守る側にも、受け継ぐ側にも……。栗須と後継者の間での葛藤などは、普通に会社の経営者とか、そういうところにも共通するのではなかろうか? 2代に使えることとなった栗須の目から見た、馬主の一代記というか、二代記。様々な葛藤と、しかし……という思いの交錯。そこに最期まで心を引き付けられた。

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