FC2ブログ

しねるくすり

著者:平沼正樹



10年の浪人生活を経て、薬学部に入学した数納薫。他の学生たちと年齢が離れすぎている彼にとって、奔放な日々を送りつつも年の近い、12浪だという芹澤ノエルは親友そのものだった。そんなノエルが、同じ授業を受ける同級生・由乃と付き合うことに。複雑な思いを抱く薫だったが、ノエルが突如の自殺。そんなとき、ノエルが残したある「薬」の存在を知り……
第6回「暮らしの小説大賞」受賞作。
ということで、物語の中心となるのはタイトルの通りの「死ねる薬」。一錠を飲めば、確実に、そして、苦しむことなく死ぬことが出来る薬。それを巡っての物語。正直なところ、作中の薬学についての蘊蓄とか、そういうのがどのくらい正しいのかよくわからないのだけど、全くの間違いだとしても、ファンタジーであると割り切っても良いと思うし。
突然のノエルの死。自殺であることは明らか。そんな中、浮かび上がってくる、ノエル自身の出自。関西の大病院の御曹司で、遊んで暮らしていた、という自身の主張とは異なる経歴。生前、付き合っていた由乃について、ノエルが語っていたこと。そして、警察の捜査、SNSの噂で明らかになっていく、ノエルを死に至らしめた薬が出回っている、というもの。
物語は冒頭。そして、作中にしばしば挿入される薬を譲渡している存在がいる、というのが示され、それが一体誰なのか? というところがだんだんと物語の中心へと移っていく。ノエルの過去。そんな彼が大切にしていた妹の存在。そして、由乃……。それぞれが抱えているもの。生きづらさ。そして、薬が存在していること……
「いつでも死ぬことができるから」こそ、じゃあ、もう少し……と言う生きる気力がわく。これは確かにあるのかもしれない。「死」じゃなくても、例えば、「いつでも辞めてやる」という気持ちを持っているから、仕事も「もうちょっと頑張ろう」とか、そういうのもあるだろうし。その一方で、全てを喪った存在にとっては最後の引き金になることも……。そういう危うさとか、その辺のスリリングさは理解できる。
もっとも、薬学についてはともかく、薬をバラまいている存在についての警察の捜査とかはかなり杜撰な気がするし、実行犯の過去とかはかなり後だし感があるとか、っていうのはちょっと感じたけれども。

No.5396

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0