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巡礼の家

著者:天童荒太



殺した。殺してしまった。思わず、人を殺してしまった雛歩は、旧へんろ道へと迷い込んだところを美しい女性に拾われる。「あなたには、、帰る場所がありますか」 道後温泉にてお遍路さんを迎える宿・さぎのやでの、雛歩の日々が始まる……
現代を舞台にした話……ではあるのだけど、何か、ファンタジーというか、おとぎ話というか、そういう雰囲気を感じる。
とにかく、物語としては、ひたすらに「優しい」世界観という感じだろうか。冒頭に書いたように、「人を殺してしまった」という負い目をもつ主人公の雛歩。そんな雛歩が(人生の)道に迷っている、ということを見抜いたさぎのや、そして、その周囲の面々はただ、雛歩にとっての「居場所」になるよう優しく迎え入れる。そして、そんな周囲の面々とのやりとりと共に、雛歩自身が、さぎのやを訪れる悩みを抱える人々との交流、その悩みなどを目の当たりにすることになる。
いや、こういうと何だけど、正直、私は田舎育ちで、田舎の同調圧力が大嫌いだし、もっと言うなら、こういうなれなれしい関係なんてあるわけない、とすら思っている。まぁ、著者自身が道後温泉近くで生まれ育ち、そういうものが嫌だった、とあとがきで書いていることから、そのこと自体はわかっていて……っていう部分があるんじゃないかとも思う。だからこその心地よさ、みたいなところに繋がるんだろう。
そんな物語のアクセントとなるのは、雛歩自身のこと。冒頭から「人を殺した」という彼女。一体、誰を殺したのか? なぜ? 正直、鬱陶しいレベルでの言葉の間違いをするとか、学力とか、そういう点では……っていう部分がある。その一方で、両親との思い出とか、そういうのを見ても虐待されていたのか? そこまで悲惨な家庭事情を抱えている、というわけではない。となると?
優しい世界観。しかし、その中にいて、自分はここにいて良い存在ではない、という思い。そんなものが……
物語的にもハッピーエンドだし、悪人とかは出てこない。そういうところも含めて、やっぱりおとぎ話的な印象になる。

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