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オカシナ記念病院

著者:久坂部羊



離島での医療を学ぶため、意気込んで「岡品記念病院」へとやってきた研修医の新見一良。最新鋭の設備が揃った病院での研修を期待していた一良だったが、医師や看護師はやる気がなく、薬の処方は患者の言いなり、大きな疾患が疑われても、本人が望むこと以上はしようとはせずに……
著者の最近の作品って、「医療には限界があるのだ」というメッセージを主にしたような作品か、医療現場のアレコレを題材にしたブラックジョークのような作品。本作は、タイトル、さらに登場人物の名前などから(例えば、宇勝なるみ(うかつなるみ))後者と思っていたのだけど、どちらかと言うと前者の印象が強い。
物語としては、一良が、病院の面々に苛立ち、ちゃんとした医療を、と様々な方策を取るけれども……という形で進んでいく。
ある意味では、著者の作品を追っている身としては既にお馴染みのテーマであるのだけど、「最も良い医療とは何か?」ということについての問題提起であると思う。
例えば、高血圧とか、糖尿病であるとかと言った生活習慣病ともいえる疾患。健康診断とかをしていれば、「これは問題です!」と医師に叱られ、その原因となるような行動と慎むように指導をされる。けれども、その患者にとって、それは必要とされているのだろうか? 勿論、それを聞いて、もっと長生きをしたいから、と改めるというのも一つの手ではある。でも、そんなに長生きをしたいわけでもないし、そういう習慣を生きがい、としている人にとっては? まぁ、生活習慣病ならそうだけど、例えば、それが癌などのときは? 手術をすれば。抗がん剤治療をすれば。そういう風に言う。しかし、著者の作品で何度も綴られるように医療には限界がある。徹底的な治療を……とした結果、一命は取り止めたかもしれない。けれども、ただ自分の意思で何かをすることも出来ず、ただ、機械頼みで「生かされているだけ」という状況になることだってある。それは果たして、正しいことなのだろうか?
そんな問いかけがあるわけだけど、この作品の特徴として顕著なのは「受け入れる側の覚悟」とでもいうべき部分じゃないかと思う。
作品の舞台となる島の人々。彼らに共通するのは、リスクは承知していて、その上で、それで死ぬなら仕方がない、という一種の覚悟。QOL(クオリティオブライフ)を下げたくない、でも、死にたくない。そういう存在ではない、ということ。その覚悟があってこその、この病院というのを思うわけである。作中では、当たり前のように、その覚悟(?)を持った人々が出てくるのだけどそれ自体が大きな問題である、というのも言えるだろう。そういう意味では、医療を提供する側だけでなく、受ける側の問題も提起しているのではないか、と思う。
まぁ、そうは言っても……っていうのもある。また、確かに、この病院でのアレコレは「おかしな」モノでもある。そういう意味では、タイトルは間違っていないと思うし、それがベストとも思えない。そういうのも含めて、著者のメッセージ性をメインにした作品だな、と言うのを思う。

No.5430

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