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Iの悲劇

著者:米澤穂信



町村合併によって生まれた広大な土地を持つ南はかま市。6年前に住民が誰もいなくなった蓑石地区を復活させるべくIターン支援プロジェクトが開始された。そのプロジェクトを担当する「甦り課」に配属された万願寺は、さばけた後輩の観山、課長の西野と共に仕事に取り組むのだが、そこでは一癖のある移住者と、そこで起こる「謎」と対峙することとなって……
物語は、連作短編形式で進んでいく。
一言でいうと、よくもまぁ、こんな面倒な連中ばかり揃ったものだ、と言う感じだろうか?
例えば1編目『軽い雨』。移住の最初のケースとなった二世帯。その片方の家から、大音量で音楽を流していて困る、というクレームが。そんなクレームに対処する中、小火騒ぎが起こって……。火の不始末ということで片づけられたが、しかし、どうしてその小火が起きたのか? 謎自体は小粒だけど、田舎だからと趣味に没頭できる、ということの落とし穴が出ている。
また、第2勝『浅い池』では、鯉の養殖を始めた家で、その鯉の稚魚が消えてしまう、という事件が。家人は誰かに盗まれたのでは? と疑っているが……。これについては、正直、なぜそんなこともわからない? という感じが……。ただ、これも、田舎に夢を見て、現実を顧みることが出来ない、というようなありがちな事例を(極端に)描いた話なのかもしれない。
その後も、次々とトラブルが発生しては減っていく蓑石地区の移住者たち。実は、その背景に……
人のいなくなった地域を再生させる。確かに、言葉としては非常に美しいし、成功させたい、という気持ちもあるはず。けれども、実際には……。それこそ、昨年(2019年)秋の、台風15号で千葉県の特に南部は大きな被害を被ったわけだけど、その原因の一つが、山間部に小さな集落が多数ある、というような状況で、道路とか電気と言ったようなインフラの復旧がなかなか進まなかったことにある。まして、本作の舞台である南はかま市は、東北地方という設定。冬場になれば、降雪がありその除雪などをどうするのか? 就学児がいた場合、その通学の足はどうするのか? 限られた予算の中でそこだけに手を広げるわけにも……。そんな地方都市の現実、というのを突き付けられる。
各編は、短編のミステリなのだけど、それを総合することで、そんな社会派ミステリへと昇華した作品であるように感じた。

No.5431

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