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最後の医者は雨上がりの空に君を願う

著者:二宮敦人





「流されるままに生きればいい」 小さな診療所を開設した医師・桐子は患者の想いを受け入れ、治療をしない、という道があることを主張する。一方、大病院の副院長ながら、院長である父と対立し、閑職に追い込まれた福原は患者の「延命」を目指す。そんな二人の元へ、HIV感染者の恋人がそれぞれ訪れて……
というところからの連作長編。
上下2巻という構成ではあるのだけど、分量としては500頁くらい。そして、各章『とある〇〇の死』というタイトルで3編(2編目は上下巻にまたがる)という形なので、1冊でもよさそうな感じではあるのだが……
何と言うか……物語の核は、桐子と福原の2人。特に、福原の物語、という印象かな?
第1章『とあるチャラ男の死』は、HIVに感染してしまった恋人の物語。感染し、そのことを受け入れて病院へ行った美穂は福原により、適切な治療を受け、普通の社会生活を送れるようになっていく。一方、駿太はそれを受け入れらず、病院へ行くこともしない。その中で、感染している、という噂が広がり追い詰められていく。そんな中で、別に……と言いつつ、桐子の元を訪れるのだが……
この1編目で福原、桐子という両者の立ち位置が示される。そして、2編目、3編目は、福原の両親の話が描かれていき……。
癌に侵され、命の危機にある福原の母。重度のアレルギーを持ち、全てに絶望している桐子は、そんな彼女の姿に生きる、というのは何なのか、ということを学ぶ。その中で、福原の母が見せた一つの本音。それの意味するものは……。一方の3編目。福原の父が脳梗塞に倒れ、その影響で認知症になってしまう。父を憎んできた福原は、病院の実権を握るべく動き始める。そんな中、桐子を父の主治医に任命するが、父は、桐子に、自分の若かったころ、母との思い出を語って……
若い日に母を失い、父は仕事だけにかまけていた。そんな憎しみの対象であった父の本音。それを認められない福原。そんな中で、桐子が「救いたい」と言ったのは……。医師として限界とか、そういうものを知っている。しかも、父は憎き相手。そんな中でがんじがらめにされていく福原と、「患者の意思を」という桐子の真の意味。その対称性が上手く昇華された結末は非常に綺麗なものだった。
まぁ、その福原がなぜ、病院で閑職に追いやられたのか、とか、そういうところが序盤はよくわからないのでちょっと戸惑ったところはあったのだのだけど、読み終わっての読後感は良かった。

No.5434、5435

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