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ようするに、怪異ではない。

著者:皆藤黒助



高校生となり、一人暮らしを始めた皆人。新入部員勧誘の輪を潜り抜けた彼は、木にヤカンが発見する。何だこれは? とそこに近づくと落とし穴!? 仕掛けたのは、筋金入りの妖怪マニアであるハル先輩。彼女は、次々と皆人のもとに妖怪絡みの事件とやらを持ち込んできて……
という形で始まる連作短編集。
タイトルなどからわかるように、ハル先輩が「妖怪によるものでは?」と持ち込んでくる事件について、妖怪などが大嫌いな皆人が推理やらを駆使して「妖怪の仕業ではなくて……」と真相を明らかにしていく、という形で進んでいく。
正直なところ、純粋にミステリとして考えた場合には、結構、推理に穴がある、というか憶測だけで、っていう部分もあるし、また、どちらかと言うと気だるげな主人公と、妙にテンションの高いハル先輩の組み合わせといった部分は、どこか既視感を覚える部分もあるのは確か。ただ、これを欠点と言うのもまたどうかな? と思うところはあったりする。というのも、主人公の皆人は別に職業探偵とかではないわけだし、そこまで気にするようなことなのかな? とも思う。そもそも、「妖怪」「怪異」という前提で話が進みかけているところを「そうじゃない」とするところに意味があるわけだし。
で、著者の作品は過去に『ことのはロジック』などを読んでいたのだけど、そこでも感じたように、その題材となる蘊蓄が印象的。作品の部隊が、水木しげる氏の故郷として知られる境港。すると、出てくる妖怪もメジャーなものかな? と思いきや、かなりマニアック。そんな妖怪、いたの? と言う感じだし。
その中で印象的だったのは、コンビニでカード入りのお菓子のパッケージが防犯カメラに映らない形で切られ、カードが抜かれている、という『コンビニの鎌鼬』。勿論、事件は人為的なもので、その基本的なトリックは序盤で考察されるのだけど、でもアリバイがあって……。田舎町だからこその、一種のなれ合い的な部分と、そこに付け込んだ悪質な行動。作品舞台などとも組み合わさって、上手く雰囲気を作り出していたな、と言う風に思う。
そして、そんな中、快刀乱麻に謎を解いてきた皆人だけど……の終盤。ただ、謎を解けばよい、というわけではない、という青春モノらしい苦い部分とかがあり、作品としてうまくまとめられているな、と感じる。まぁ、なぜハル先輩、皆人がこういう性格なのか? とか、そういうところは、まだ掘り下げがされきっていない感じはするのだけど、これは2作目以降で掘り下げられるのかな? 続編もチェックしてみたい。

No.5464

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  •  ようするに、怪異ではない。
  • ようするに、怪異ではない。 ≪あらすじ≫ 高校に入学した皆人が出会ったハル先輩は、筋金入りの妖怪マニア。彼女は皆人のもとに「妖怪がらみの事件」とやらを次々に持ち込んでくる。部室に出ると噂の幽霊の正体、天窓から覗くアフロ男、監視カメラに映らない万引き犯…。とある過去から妖怪を嫌う皆人は、ハル先輩に振り回されながらも謎を解き明かしていく。爽やかでほろ苦い、新たな青春ミステリの決定版! ...
  • 2020.05.14 (Thu) 21:23 | 刹那的虹色世界