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引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険

著者:雫井脩介



父の創業したアウトドアグッズメーカー「フォーン」で若くして役員となった鹿子小穂。新作アイテムの開発などを精力的に行ってきた彼女だが、父がヘッドハンティングによって招聘した大槻の拡大路線に反発。その結果、小穂は会社を追い出されてしまう。そんな彼女を拾ったのは、奇しくもヘッドハンティング会社。そして、いきなりヘッドハンターにされてしまい……
ということで、新米ヘッドハンターの小穂が依頼をこなしていく形の連作短編集。1巻では3編収録。
著者の作品と言うと『犯人に告ぐ』とかのようなミステリ作品を中心にして、『銀色の絆』とか、『クローズド・ノート』みたいな作品などがあるわけだけど、本作もヘッドハンティングというのを題材にしたビジネス小説(?)というちょっと変わり種の作品と言える。
実は、既に2巻も読み終わっているのだけど、1巻はヘッドハンティングとは何か? それはどういう形で行われているのか? というような部分が大きく描かれている。
1編目『代理』は、粗筋に書いたように、小穂が父の会社を追われ、いきなり面接をやらされる、という話。ここは、物語の導入、と言う感じかな? そして、作品の本領が発揮されてくるのは2編目『微笑』。
小穂らに依頼を出したのは関西でビジネスホテルチェーンを経営する男。東京進出を考えているが、東京の不動産情報などについては疎い。そこで、そんな情報に詳しい存在を、というもの。そこで目を付けたのは、都内の一等地でレストランを経営する男。不動産会社で働いていた、という標的だが、当然、現在は自らが経営者。ホテルチェーンへは行かない、と断るが……。転職を希望している、少なくとも、全く考えていないわけではない、という存在を、というのならばわかる。しかし、そうではない人間をどう説得するのか? 相手の元に何度も通い、というだけでなく、その中で観察をし、言い方は悪いが足元を見たり……そんなやりとりが印象に残る。
3編目『冒険』。大手商社から依頼されたのは、傘下に加えたスポーツショップチェーンの社長になる人を探してほしい、というもの。しかし、そのチェーンははっきりいて経営が傾いており、親会社である商社の考える立て直しも、売上げを伸ばす、というよりも不採算部門を切り捨てるというもの。つまり、大規模なリストラを、ということ。そんな中で浮かび上がってきたのは、山室という男。これまで、多くの会社の役員、経営者となり数多くの大規模リストラをしては、その会社を去ってきた存在。「リストラが快感になっているのでは?」などとささやかれる山室に小穂は不安も覚えるのだが……
このエピソードは、山室の存在自体が印象的。上に書いたように大規模なリストラを次々と敢行し、周囲からの評価も色々と言われる存在。現在、勤めている文具メーカーでも同様のことをして、経営を立て直してきたが、しかし、解任という話も浮かび上がっている。そんな山室は、「まだやるべきことがある」と言うが、それは? リストラ屋、コストカッターと言われる山室だけど、ただそれだけの存在ではない。冷酷なように見えて実は……。そんな彼の人間性がひっくり返る真相が心地よかった。

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