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きのうの春で、君を待つ

著者:八目迷



父と住む、東京の家を家出し、かつて住んでいた離島・袖島へと戻ってきた船見カナエ。幼馴染のあかりと再会を果たすのだが、そんな中、意識がとび、気づくと4日後へ。しかも、その間に、あかりの兄であり、カナエにとってのヒーローでもあった彰人が不可解な死を遂げていて……。彰人を救うため、時間移動の中で動くカナエだったが、そのなかであかりの秘密が明らかになっていって……
著者の前作『夏へのトンネル、さよならの出口』同様、本作もタイムリープが題材の物語。
ただし、本作の場合、その時系列の変化がちょっと特殊で、1日進んで2日戻る、という変則的な設定に。すなわち、いきなり4日後に意識が飛ぶわけだけど、そこから24時間が経過したところ(最初から数えれば5日後)から、2日前に戻って、という形になる。当然、その前に何が起きていたのか、などは自分はわかっていないが、しかし、自分の意識の感覚でいえば24時間後に行うことと続いている、という状況。そんなカナエの事情を知っているのは、幼馴染のあかりだけ。説明口調で書くと、却ってややこしくなった気がする(笑)
そんな物語は、カナエがあかりの兄・彰人を救う、という目的になるのだけど、その中で、島を離れていた年月の移り変わりとか、そういうものが残酷であり、同時に美しい、と言う感じがする。
なぜ、カナエが彰人を救おうとするのか? それは、カナエにとって彰人はヒーローであるから。島の弱小校であった高校を甲子園へと導いた島にとってのヒーロー。さらに、幼いころ、イジメにあっていたカナエの、心の支えにもなっていた存在。現在は悪評もあるが、しかし……。その一方で、カナエが島を離れていた数年間の間に、彰人は……。
彰人をヒーローとして救いたいカナエ。一方、変わってしまった兄、貧しい家庭。その中で、幼いころから思っているカナエと同じ大学へ行きたい、というのが願いになっていたあかり。しかし、彼女の想いはまた、兄によって……。そのすれ違いが切なく、その中でカナエが取ろうとする行動もまた変化していく。そして迎えた彰人が死ぬ運命の日……
2年間という空白の時間の中で変わってしまった人間関係。そして、タイムリープをする中で変化していく人間関係。結末もまた、そのテーマに沿った形のものだった、というのがよくわかる。結構、ヘビーな物語ではあるが、しかし、希望のある終わり方。読後感も凄くよかった。

No.5470

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