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トリモノート

著者:森川智喜



ときは18世紀後期のお侍さんの国。齢16歳のお星は、藪の中で光円盤を発見。この円盤、なんとひとりでに穴が開き、中には見たことのないものばかりが並んでいる。お星と、幼馴染の舟助は、それが未来から時空を超えてきたものとは知らず、その道具に興味津々。その道具を使い、うだつの上がらない岡っ引きであるお星の父・三六の手伝いをすることになって……
という連作短編集。
なんか、設定そのものを見ると、山本巧次氏の『八丁堀のおゆう』シリーズっぽい。つまり、未来の道具、技術を使って事件を捜査。ただし、江戸時代(だよね?)の技術とか常識とは全く違うものなので、犯人は特定できても、それを周囲に納得させるのに四苦八苦……と言う辺りは同じ。一方で、当然、違い、というのもあって、その最大のものは、お星、舟介はその道具が犯人特定の道具となり得ることはわかっている。ただし、それは感覚的なもので、確証は持っていない、ということ。
例えば2編目『うぐいす茶碗と指おばけ』。要は指紋。茶碗が盗まれてしまった。その犯人は誰なのか? というのを指紋を使って探る、と言うお話。現代人で、ミステリとか、そういうのになれている人ならば、指紋は一人一人、違うパターンを持っていてそれを採取できれば、その指紋の持ち主が、それに触った、ということが確定する。でも、この作品の舞台では、そんな知識は持っていない。お星にしろ、舟介にしろ、身近な人の指紋を取って、一人一人、それが違うようだ、ということは感覚的に理解する。でも、じゃあ、本当に同じ人がいないのか? という点についてはわからない。100人の指紋を採取し、それぞれが違っていたとしても、101人目は前の誰かの指紋と同じ立ったりするかもしれない。盗んだのは、誰なのか? この辺り、論理学とか、そういうのを出しながら話を進めていく様はいかにも著者らしい。
そして、中でお星たちが獲った手段は……。作中で、トリッキーな方法とあるけど、確かにちょっとトリッキー。でも、この時代、この条件ならばベストと言える方法なのだろう。
そんな感じで進んでいく中、この赤子は自分の子だ、と取り合う女二人。どっちが母親なのか? を問う話は、ちょっとイレギュラー。まぁ、ある意味、この設定の限界を示す話なのかもしれない。その辺り、科学技術とか知識とかの変遷を感じるのだけど……その一方で、ちょっと不完全燃焼的な感覚も覚えた。

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