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箱とキツネと、パイナップル

著者:村木美涼



大学を卒業した坂出は、就職先のスポーツショップが入るショッピングモールにほど近いアパート・カスミ荘に入居した。一見、ごく普通のアパートであるが、姿は見せないもののマメな大家、さらに個性的な住民たちがいる場所だった。住人たちとの楽しい日々を過ごすことになる坂出だが、おかしなことも沢山起こって……
第6回新潮ミステリー大賞・優秀賞受賞作。
なんだかんだ言いながらも追いかけている新潮ミステリー大賞。これまで読んだ歴代の受賞作は、ヘンテコな作品が多いのだけど、本作も結構、ヘンテコな話。以前の受賞作でも言われていたけど、この作品も、選考委員である伊坂幸太郎氏の作品が頭に浮かんだ。
物語の一番の魅力は何と言ってもカスミ荘の住人との交流かな? 粗筋にも書いたけれども、物語の中心となるのは、同じアパートに住む個性的な住人とのやり取り。引っ越しを手伝ってくれた友人の藤井。息子のことをやたらと心配する前原夫妻と、巨漢の息子・翔馬。コミュ障のコンビニ店長の村瀬、生真面目だけど、酒を飲むと……な北白川、夜の仕事をしているっぽい女性・進藤。さらに、住人ですらよくわかっていない謎の人物・鈴木。不可思議な出来事は起こるのだけど、それについて、(鈴木は出てこないけど)住人がアレコレと噂をしたり何なりと話をし、時に一緒に食卓を囲み、助け合い……というやりとりが何よりも楽しい。
そして、物語として、確固たる謎……とでもいうのかな? 例えば、「殺人事件が起こりました」っていうのならば、その犯人は誰なのか? みたいなものがあると思うのだけど、本作の場合、それはない。しかし、やりとりを重ねる中で、姿を現さないが、「回覧板メール」やらで、やたらとマメな大家は何者なのか? 姿を現さない「鈴木」は何者なのか? 隣の空き地を巡ってトラブルを抱えている隣人は何なのか? さらに、なぜかうまく機能しないインターフォンに、扉をたたく「こん、こん……」という音……。謎は謎だけど、でも、どこへ向かうのかはわからない。その不安定さ。だからこそ、どう決着するのかが気になった。
物語のオチとしては、一つの解決はしている。でも、すべての謎が解けて……というわけではなく、何かふわふわとしている感じはある。でも、希望の見える終わり方とかを含めて、意外と満足感のある終わり方だった。

No.5521

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