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怨毒草子 よろず建物因縁帳

著者:内藤了



仙龍を救うためにも、まずは曳家とは何かを学ぶことにした春菜。仙龍とは別の会社による曳家を見学することになったが、その直後から、その現場近くでは怪異の目撃談が相次ぐことに。調査に出た春菜だったが、彼女が見たのは無残な死様の遺体が転がる、という幻視。仙龍は、春菜が幻影を見ているときに、地獄を描きたい、という欲求があることに気づき……
シリーズ第7作。
タイトルだけを見ると、建物じゃない! っていうか、いわゆる不動産ですらない! 本だよ!
と、変なテンションで書き始めてみたのだけど、話は面白かった。事件の発端は、寺の持仏堂の曳家を行ったことで怪異が始まった、ということ。建物そのものには特に因縁などはなく、春菜自身も特に嫌な気配などを感じることもなかった。しかし、実際に、その直後から始まっているのだから、何か関係があるはず。
そんな中、小林教授が見つけたのは、その寺にある、という「宝」の存在。あるらしい、ということは伝わっているが、しかし、実際にその場には存在していない。それは一体、何なのか? そして、春菜がサニワの力によってみることとなった地獄のような光景。その光景の意味するところは? 起こっている怪異と、地獄のような光景の共通点。さらに、教授らによって明らかにされていく、宝の正体……。これまでの作品だと、予算が、とか、そういうところが入るのだけど、今回は、そういう部分がなく、純粋にその寺、宝にまつわる因縁と、怪異の正体、という部分にスポットが当たっており、純粋なホラーモノとして引き付けられた。
ある意味、俗悪趣味な絵を描いていた絵師。その絵師の「描きたい」という想いと、そのために実行していた行為に対する罪悪感。「異常である」と言えばその通りなのだけど、理性と本能の鬩ぎあいとか、そういうものが強い想いへとつながっていく、という部分の生々しさが非常に魅力的。
その一方で、春菜と仙龍の関係性。惹かれあっているが、しかし、そこに横たわるのは仙龍の寿命と言う運命。それを何とかしたい、と思う春菜と、そういった努力を続けながらもどうしてもできなかった過去の事例。そこからできてしまう亀裂。主人公が春菜だから、勿論、春菜の想いには共感できるのだけど、一歩、引いて考えてみると仙龍側の想い、っていうのもよくわかる。物語の主軸の一つが二人の関係なのだけど、今回、その関係が新たな局面に入ってきた、というのは間違いないだろう。そして、ラストシーンでの春菜の行動。
怪異に関してのアレコレという部分の面白さ。そして、二人の関係性の進展と言う部分。双方ともに引き付けられた。

No.5523

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