FC2ブログ

誘拐屋のエチケット

著者:横関大



誘拐屋――人を誘拐し、指定された場所へと送り届ける――を営む田村は、組織からの命令で、根本という新入りの教育係を受け持つことになった。一人のほうがやりやすい、と思う田村だが、相手に過剰に感情移入する、余計なことをすぐに請け負う根本に振り回されることになって……
というような感じで進んでいく連作短編形式の作品。全7編。
いかにも著者らしい作品。誘拐屋……冒頭でちょっと説明したけれども、相手を無理やりに拉致して、指定された場所へと送り届ける。勿論、借金から逃げている相手を、という場合もあるけれども、スキャンダルにまみれた芸能人を誘拐してマスコミなどから守るとか、そういう面もある。非合法ではあるのだけど、悪人である、という印象もあまり受けない。で、田村たちは、その誘拐を請け負うのだけど、同時にその裏なども見つける、という形で進んでいく。
例えば1編目。田村と根本が請け負うこととなったのは、年下の俳優との不倫スキャンダルが発覚した女優の誘拐。新人の根本と組まされ、その根本に振り回されながら、その誘拐を請け負うのだが、そのスキャンダル自体の背景は……。なんか、こういうスキャンダルあったよな……というのを思いつつ、田村、根本両者のキャラクターをしっかりと覚えさせるのが出来たのは流石。
そして、エピソードを続けていく中で感じるのは、田村の存在。目立たないように、しかし、格闘技をやっていて「仕事」に対してはストイックな存在。当初は、根本のことを鬱陶しい、と思いつつも、しかし、何だかんだで根本の願いなどもかなえていく。そして、言葉の上ではクールに振舞いつつも、どんどん積極的にお節介を焼くようになっていくのが微笑ましい。
そんな感じで田村と根本がいいコンビになってきた、と思ったところで、突如、根本が組織を離れてしまって……
6編目から唐突に入ってくる結婚を前にしたカップルの話。6編目の事件に無関係というわけではないのだけど、直接の関係者ではない。そして、そんな事件の裏で、なぜか根本が暗躍している様子が見られる。そして、7編目。そのカップルの結婚式になぜか招待されたそれまでの事件関係者。相次ぐトラブル。根本の行動の真相……。そこまでの事件でちょっとずつあった伏線がしっかりと回収された結末は見事の一言。
各編40頁程度の話なので、誘拐に関する準備とか緊張感とか、そういうものはない。また、根本がどうやってこの組織に入ったんだ? とか、ツッコミどころはある。あるのだけど、それぞれのエピソードの中にある謎。そして、それが繋がっていって、温かい気持ちになれる読後感。著者の良さがしっかりと感じられる。

No.5524

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0