FC2ブログ

帝都地下迷宮

著者:中山七里



廃駅めぐりが趣味の公務員・小日向は、ある夜、趣味が高じて廃駅となっている地下鉄万世橋へと潜り込む。不法侵入をして訪れたそこで、小日向があったのは地下で暮らす人々。その人々に拘束された小日向は、彼らが「ある事情」でそこで暮らしている、ということを知る。普段は入ることのできない場所、そして、人々の境遇を知った小日向は、「名誉市民」として通うようになるのだが、そんな地下空間で殺人事件が発生して……
今年(2020年)、著者は12か月連続で新刊を刊行する、ということで、その1作(ちなみに、『騒がしい楽園』も、その1冊)
とりあえずいうと、政府の側の事情で地下で暮らす人々・エクスプローラーの存在を知った小日向。役所で、生活保護などの申請受付をしながらも、実際に困っている人に手を差し向けられないもどかしさとか、そういうものを感じていた小日向が、微弱ながらも、その知識を生かして彼らを守ろうと動き出し、職場でもおかしなことに異を唱えていく、というような部分は面白かった。
面白かったのだけど……はっきり言って、かなり荒唐無稽な話。それも、荒唐無稽でも、一種のファンタジーとか、SFとかとして割り切って読める作品ならば良いのだけど、先に書いたように公務員としての知識を生かして……とか、そういうところが、現実的なだけに、却って現実離れした印象を受けずにはいられなかった。
以下は、ネタバレにはなるので、その点については注意してほしいのだけど……

(ネタバレ)エクスプローラーは、国の政策の失敗によって日光を浴びることができなくなった存在。そして、それをひた隠しにするために、地下で暮らすことになった。彼らは国に対して恨みはもっている。しかし、ほとんどが老人という状況で何かをする、ということは出来ない。しかし、そこで起きた殺人の被害者が、実は公安刑事であったことで、彼らが公安からマークされている存在であること。一方で、その事件により、捜査一課も捜査を開始することで、警察の2つの部署からマークされていく……という展開になっていくわけである。
でも、その病気の設定などはともかくとして、そうなったから、と言って「地下鉄の廃駅に住め」ってことになるかい? という感じが……。
また、終盤、廃駅マニアの小日向が、その知識をもとにエクスプローラーからの逃走を図るのだけど、ただのマニアが知っている知識なら、地下鉄の会社とかに資料とかあるよね? 警察が、そういうのを使わないわけがないじゃないか、という気もする
(ここまで)

また、殺人事件についても、取ってつけたような解決。単行本で280頁ほどの作品で、色々と詰め込んだ結果、何とも中途半端な形になってしまったように思う。
「かってこれほど書くのに難儀した作品はありませんでした」と著者が宣伝文句としてつけているのだけど……。申し訳ない、それ、悪い意味で受け取ってしまった。

No.5526

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。
スポンサーサイト



COMMENT 0