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ようするに、怪異ではない。 ある夏の日のがらんどん

著者:皆藤黒助



「この想いをあなたに伝えることをお許しください」 夏休み、海釣りに向かった皆人たち、妖怪研究同好会。そんな中、皆人が釣り上げたのは、奇妙な恋文が入った小瓶。これをどうしたものか? そんな話をしている中、その恋文の文字はすべて消えていて……(『漂流する文車妖妃』)
など、全4編を収録した連作短編集。シリーズ第2作。
とりあえず、まず思ったこととしては……前作よりも、話としてライトな印象だ、ということかな?
前作は、主人公である皆人の過去をめぐっての話だったり、はたまた、推理をする中で相手を傷つけてしまって……とか、そういうエピソードがあったのだけど、今回は、そういう部分がほとんどなく、妖怪研究同好会の面々がワイワイとやっている、というところが強調されているように感じたため。
冒頭のあらすじでも書いた1編目『漂流する文車妖妃』は、釣り上げた小瓶の中の恋文。なぜか、その文字が消失。なぜ、消失したのか? さらに、そもそも、恋文であるのに、相手に読まれないことを前提としていたり、なぜか、相手の名前を特定しているのにもかかわらず、瓶に入れて海に流す、ということをしている。すべてがちぐはぐであり、そんな中、面識もないのに知っているその恋文の相手……。そこから導き出されるのは……
恋文の真相について、ちょっとビターな部分はあるのだけど、そんな真相を見抜いて、兎鳥先輩とかがショックを受けないように……という皆人の行動などもあって、皆人、良いやつ、という読後感のほうが強く残る。
2編目の『ヨーロピアンな迷い家』、3編目『駄菓子屋の倩兮女』あたりは、怪異という感じすらしないしなぁ……。2編目に関していえば、謎といっていいのかも迷う話。3編目に関しては、声の正体が別のものだと思っておりました。あれだけはっきりとしたものだと、意外と正体についても想像がつくんじゃないか? と思うのだけど。
そんな中での表題作。兎鳥先輩がなぜ、妖怪が好きになったのか? という疑問。それは、幼い日に「がらんどん」に出会ったことだという。そんな中、皆人は、昔、ある少女に出会った時のことを思い出す。それは、小学生が転落をして、ケガをする、ということが立て続けに起きた、という事件だった。
これ、オチについては、たぶん、この時点でわかると思う。
ただ、その前段階である事件。小学生らしい動機とある狂気じみた思い。その両方の組み合わせ、というのがインパクトに繋がっている。ちょっとした悪戯心と、それに付け入り事件起こそうとした存在。物語の結末は、明るいものだけど、事件そのものがかなり暗い印象と結びついている、という風に言わざるを得ない。

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