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闇の伴走者 醍醐真治の博覧推理ファイル

著者:長崎尚志



出版関係専門の調査員であり、元警察官である水野優希の元へ入った依頼。それは、戦後から活躍し、数年前にその生涯を閉じた漫画家・阿島文哉の仕事場から発見された未発表の画稿が、本物かどうかという調査してほしい、というもの。その画稿には、「漫画家」が女性を物色し、誘拐、そして、殺害し埋める、という様が描かれており、ちょうど、1970年代に発生した連続女性失踪事件を彷彿とさせるものであった。漫画に詳しくない優希は、専門家としてフリーの漫画編集者・醍醐を紹介される……
著者の作品で、久井シリーズ以外を読むのは初なのだけど、やっぱり、話がどこへと向かうのか? 急転直下で謎が解けて、次へ……という目まぐるしい展開というのを一つの売りにした作家なのだな、というのを感じる。そして、本作の題材は「漫画」なのだけど、まだ小説家としてデビューしたばかりの著者が、その得意分野を題材にしてきたのだろう、というのも感じた。
ということで、物語の最大の謎は、阿島の仕事場から発見された画稿は本物なのかどうか、という部分。勿論、漫画について素人である優希にはわからない。そこで、数々のヒット作の担当をしていた編集者・醍醐の手を借りることに。絵のタッチは、当の阿島と同様、いや、それ以上に上手い。作品の内容は、1970年代に起きた事件を彷彿とさせる。しかし、使われている手法などから見ると、もっと下った時代の可能性が高い。例えば、スクリーントーンの使い方など。さらに、肝心のストーリーは、というと……
スタート地点から不穏な空気は漂っているけれども、そこから醍醐の目を通して語られるアレコレ。文字通り、専門知識の羅列のようなところからの推理になるわけだけど、まず、事件と関係なしに、この話自体に興味を惹かれるところ。そして、歴代のアシスタント、編集者といったところから、この画稿を残した人物は誰なのか、というのを絞り込んでいく。
その一方で、元警察官の優希は、というと、当時の失踪事件を担当した元警察官らへと聞き込みをはじめ、その概要を探ることに。被害者の共通点。事件の起こった時期。さらに、突然、事件そのものが終わったこと。そして、それは、阿島のアシスタントの仕業なのか……へと……
ここまででも、十分に魅力的な謎があり、それを活かした展開であり、一本の長編作品として成立させられるんじゃないかと思う。ところが、そんな中に、この事件を起こした「漫画家」の正体を突き止め、彼に事件を起こさせようとする「漫画編集者」なる人物のパートが加わり、物語の流れが急変。さらに、その事件も再び急展開を遂げていって……
途中までは画稿は本物か、偽物か? 偽物ならば、誰が? というシンプルな謎。しかし、そこから次々と急展開が待っており、謎の人物が出てきた、と思ったらアッサリと正体が判明しまた、次の謎が提示され……とだんだんと混沌としていく様はすさまじい。しかも、ただひっくり返しだとかがある、というだけでなく、優希がピンチに陥ってみたりとか、文字通りの命がけの戦いへ。そして、最終的には、再びスタート地点の画稿へと戻り、その漫画の真の意味へ……この展開のさせ方に惚れた。色々と揺さぶられながら、しっかりときれいに着地するのだから……
そして、そんな物語の中で、最初は、優希から「10分以上、一緒にいたくない相手」という扱いだった醍醐。そんな彼が謎に取り組む中でその角が取れていく、そして、優希のことを心配してみたりとか……だんだんと魅力的に感じられていくのも特徴。結構キャラクターという観点でも優れているんだろう。
うん、面白かった。

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