FC2ブログ

天才ハッカー安倍響子と五分間の相棒

著者:一田和樹



きっかけはラスクだった。クレジットカードの利用明細を眺めていた高野肇は、そこに注文した覚えのないラスクの購入記録があることに気付く。犯人捜しの末、彼がたどり着いたのは隣室に住む美女・安部響子の仕業であることを突き詰めた肇。そこで肇は、彼女からハッカー集団の活動に加わらないかと誘われる。トラブルを放置する企業を攻撃し、謝罪と賠償を行わせるその活動は、「世直し」として、世間の支持を集めるのだが……
いつも通り、ネットなどを題材とした著者の作品。
ともかく、冒頭に書いた、粗筋の流れからハッカー集団に加わることになった肇。最初は、安部響子の指示に従い、SNSなどから……とやっていたが、やがて、ハクティビスト集団ラスクとして、不正などを行った企業へ……という方向へ活動を転換。次々と成果を上げる一方で、警察は彼らをとらえるために策を打ち始める……
作中ではツールを使ってはいるが、ツイッター、フェイスブックなどのSNSを使っての個人情報の取得であるとか、そういう部分とかはいかにも著者の作品らしい。というか、SNSって、個人情報の漏えいとカにもつながるけれども、一方で、そういうのをなくしたら、じゃあ何のためにしているの? という部分があるわけだしなぁ……。そういう序盤のハッキングの話などは、解説の大矢博子氏が言うように、とっつきやすい話題で入りやすかった。そして、活動が活発になっていく中での、警察の対応。「犯罪者をとらえる」という目的の中、様々なツールなどを用いて、人々の活動を文字通りに監視するかの如く動いていく警察。防犯カメラや銀行口座は勿論、ネットワークで繋がったスマートメーターまでもが監視対象として犯人絞り込みに使われていく。使おうと思えば、何でも使える警察など、権力側の能力。また、そうやって流用することが出きる、というネット社会そのものの在り方などをさりげなく描いている作品ともいえるのだと思う。
また、個人的には、高校生である拓人の視点で綴られるパートが印象的。「ラスク」という集団が活動をしているのを知り、その支持者として行動を送り始めた拓人。しかし、同じ「支持者」を名乗りながらも、その思想などを考えずにただ騒ぎたいだけの者を見たり、自らの親のように、ただラスクを犯罪者として考える者もいる。そして、警察の包囲網が狭まる中で離れていく支持者というのも目の当たりにしていく。ある意味で、ネット上での「炎上」騒ぎとか、そういうものと似ていて、盛り上がっているときには便乗し、収束化すると……というネット上でのあれこれとかを彷彿とさせるものがある。ある意味、ネット社会の広まりって、そういう部分を内包しているのかな? なんていうのを拓人視点のパートを見ると考えてしまう。
正直なところ、後半の警察による包囲網。その中で、ラスク幹部の中にも裏切り者が出て、しかし、肇、安部は逃げ切りを狙って、という流れは、警察による情報操作などの心理的プレッシャーとかはわかるけど、作中の技術的な面ではさっぱりという部分はあったりする(私にわかるのは、上に述べたように、やろうと思えば可能なのだろうな、ということ) そのあたりの技術的な面で「これは!」という驚きなどを得られなかったのは、多分、私がIT音痴だから。このあたり、詳しい人が読んだときは、どういう評価になるのか、というのが気になるところ。
最後に、解説では肯定的に評価された安部響子のキャラクター。カワイイ、っちゃぁ、カワイイのだろうけど……漫画とかラノベとか、そういうのを読みなれている自分としては、結構、定型的だな、とも感じられた。

No.5541

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。


スポンサーサイト



COMMENT 0