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さえこ照ラス

著者:友井羊



沖縄本島北部の法テラス。スタッフ弁護士は東京の大手弁護士事務所の若きエースだったという阿礼沙英子。オジィ、オバァの方言に苦戦をしながらも、持ち込まれた相談をビシバシと解決。そんな沙英子の活躍を描く連作短編集。
全7編を収録。
物語の主人公は、法テラスの事務員で、なぜか調査員みたいな扱われ方をするお人よしの大城。そして、トラブルを実質的に解決するのが弁護士である沙英子という形の役割分担。で、法テラスを舞台にした話で、法律相談が……というと、法廷ミステリみたいなものを予想すると思うのだけど、法律的な話をしながらも、その中の謎を解くという普通のミステリに近い形をとっている。そのうえで、沖縄、という土地がポイントになっているものが多い。
1編目の『オバァの後遺障害認定事案』。恐らく、この話が唯一、沖縄と関係がない話じゃないかと思う。
物語としては、交通事故にあった老婆。医者の診断の結果、完治している、ということだが、その箇所がずっと痛い、という。医師、さらに、息子までもが気のせいだろう、下手をすれば、トラブルメーカーの孫が金に困って祖母を……なんて疑うのだが……。「こういう展開ならば、たぶん、こういう真相」というのはあるのだけど、その中で、祖母を心配するけど……という孫を叱り飛ばし、さらに、老婆が嘘を、という医師、息子も……という沙英子、というところでキャラクターを植え付けるのには十分な話だと思う。
で、2編目以降は、というと、沖縄の土地というのがポイントになっている。例えば、土地の相続をめぐっての話。相続の対象となる場所は、アパートか、米軍基地の軍用地か? 不動産の相続をめぐっての争い、というのはあるけど、アパートと軍用地。片方は、自分で経営せねばならないけど、片方は国がしっかりとお金を払ってくれる優良物件。さらに、そこに戦時中、多くの人々が亡くなり……なんていう事情も絡み、まさに沖縄ならでは、という物語。また、沖縄の、コミュニティでの互助システムである模合。その模合をめぐっての話は、沖縄の、コミュニティが根強く息づいている様子と、逆にそこへ……という移住者がいる、という部分での隙を突くような話。変わったようで変わっていない。変わっていないようで変わっている。そんな部分をうまく料理しているんじゃなかろうか。
で、まぁ、基本的には沙英子が一刀両断して……という形なのだけど、何気に沙英子の変なところとかも面白い。基本、合理主義なのだけど、何気にお化けとか、そういうのが嫌いだったり、はたまた、沖縄料理とかにこだわって変なところでトラブルを呼び込んだり……見た目とかはバシッと決めているのだけど、何か三枚目な部分というキャラクターは魅力的。
ただ、その沙英子が、なぜ大手の法律事務所を辞めてこんなところに来たのか? とか、そういうところはいまいちわからないまま。そのあたりが気になった、っていうのも確かだったりはする。

No.5543

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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