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パンダ探偵

著者:鳥飼否宇



ヒトと呼ばれる種が地球上から滅ぼして200年あまり。世界は知能を持った動物たちの王国となり、肉食・草食の区別なく、平和に暮らしていた。そんな世界で、保育士を目指す天涯孤独なジャイアントパンダのナンナンは、突如、何者かに連れ去られてしまう。だが、そこでは何かを要求されることはなく……。一方、ライガーである探偵タイゴは、自分の子供が誘拐された、というホルスタインの依頼を耳にする……(『ツートーン誘拐事件』)
など、全3話を収録した連作短編集。
タイトルでは「パンダ探偵」とあるけれども、主人公であるパンダのナンナンが「探偵」として活躍する場面は、少なくともこの巻ではすくない。というのも、粗筋で書いた1編目で、ナンナンは探偵どころか被害者の側だし、一応、探偵事務所の一因となる2編目でも、先輩であるライガーのタイゴについて回る見習い、というような立ち位置。3編目で、そのタイゴが大統領殺人事件の容疑者として逮捕されたとき、ナンナンがタイゴの容疑を晴らすために動いて、探偵らしい活動はするけれども、最終的にはタイゴが……となるため。そういう意味で、「パンダ探偵」と言いながら、それほどパンダ探偵という印象は強くない。
ただ、著者は鳶山、猫田の「観察者」シリーズなど、自然の動物、昆虫などの生態というのを題材にした作品を書いている人物。本作も、擬人化された動物が社会を築き、ほかの動物を食べてはいけない、というようなルールがありつつも、各動物特有の能力とか、生態とかというものが大きな意味を持っている、という形でのミステリになっている。それは、観察者シリーズの作風とも近い部分があるな、というのを思う。
例えば1編目でいえば、タイゴはホルスタイン、そして、マレーバクが立て続けに誘拐された、という事実にたどり着く。そして、そこからタイゴは、白黒のツートーンカラーの動物が誘拐されているのでは? と考える。果たして、ナンナンもた、誘拐されていた、ということになるのだけど、誰が、なぜ、ツートーンカラーの動物を誘拐していたのか? ナンナンらの証言によって、犯人がどういう特徴を持っているのかが、判明する。そして、その犯人、いや、犯獣の特徴は……。そして、誘拐されたナンナンは、ただたらふく、食事をしただけだったのは……というのが組み合わされると……に納得。逆に2編目は、食糧庫から大量の干し草が消失。完全なる密室とはいえないにしろ、保管庫の前には見張りがおり、空いている反対側は断崖絶壁。形は本格もののように見せかけて、でも、各種の動物が、ルールを作って……となった場合に、こういう事件も起こるんじゃないかと思う。まあ、ナンナンとか、コアラとかみたいな存在はまた特例になりそうだけど……
ただ、タイゴが容疑者になってしまう3編目も含めてみると、ナンナンが探偵の道へと進む、成長過程という感じでいいのかな? というのも思う。自他ともに認める運動音痴。けれども、自分を助けてくれたタイゴに憧れ、警察官だった亡き兄とタイゴを重ねる。そして、そんなタイゴがピンチのときは、タイゴに教わったことをもとに、聞き込みなどをして推理を巡らせる。1巻の段階では、それで解決! まではいかないものの、着実に一歩を踏み出しているのがわかる。となると……
この世界には、ナンナンたちの暮らす国以外にも、体制の違う国があり、その間での対立なども存在している。そして、その国の諜報員がタイゴを……というシーンもある。となると、今後、ナンナンが……というときも、当然のようにあるだろうしな……

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