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罪人の選択

著者:貴志祐介



全4編を収録した短編集。
著者の作品というと、まずはホラー作品。そして、最近は青砥、榎本コンビのミステリー作品というイメージがあるのだけど、本作はSFという趣の作品が多い印象。そして、収録作の初出時期を見ると、30年以上前の1987年のものから、2015年のものまで、とかなり幅広い時期に綴られた作品が収録されている。
個人的に印象に残ったのはまず2編目の『呪文』。宇宙へと人々が進出し、その地への植民が広まった時代。人々は、その環境で適応するために進化をしている。また、その一方で入植に失敗し、滅び去った星も数多くある。金城が調査に訪れた星も、そんな入植地であり、極めて厳しい状態にある場所。そして、そんな地では「マガツ神」と呼ばれる存在が信じられている。しかも、その「マガツ神」とは、人々に不幸を与えるものであり、人々はそれを奉るのではなく、何かが起きたとき、そんな神を攻撃する、という形で発揮されている……
全知全能の神がいる、というわけではない。また、日本の八百万の神のように、災いをもたらすものも、奉ればプラスになる、と考えられているわけではない。そんな信仰がなぜ生まれたのか? そして、そんな入植などを推し進める企業を動かしているもの……。民俗学というか、宗教学というような考察と、世界観そのものの組み合わせ方が上手いな、と思う。で、ここまで極端ではないけど、現地の人々の想い。例えば、開拓民として送られた人々とか、ある意味で「棄民政策」なんていわれたようなものがあるわけだけど、そういう人々の恨みとか、そういうものとも共通した部分があるんじゃないかろうか、なんていうのを思わずにはいられなかった。
逆に、SF的な要素があまりないのが3編目の表題作。
2つの時間軸で行われる「私刑」。戦後まもなく密造されたバクダンと呼ばれる酒と、自己流で作られたフグの卵巣の糠漬けの缶詰。それぞれの時代で、罪人は「どちらかを選んで、それを口にすること」を迫られる。どちらかは毒で、どちらかは助かる。それぞれ、助かる方法を考察し、選択をするが……。過去パートでは、純粋に目の前の情報から。もう一つのパートでは、その過去の状況から……
それぞれ、論理的に導き出した結論。しかし、時間の経過というのが……。このオチは何となく予想することが出来たし、後味も決して良くない。ただ、その後味の悪さも含めて持ち味なのだろう、という風に感じた。

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