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ガラッパの謎 引きこもり作家のミステリ取材ファイル

著者:久真瀬敏也



テレビで放映された「鹿児島の隠れキリシタン」特集。しかし、その番組は、出演していた大学教授により完膚なきまでに否定されてしまう。その番組に出ていた老人の孫娘・葵の依頼で、隠れキリシタンについての新説に挑むことになった引きこもり作家の水瀬と、幼馴染の大樹だったが……
第18回『このミス』大賞・隠し玉作品。
このミス大賞、過去の作品は基本的に全部読んでいるのだけど、多分、殺人とか傷害とかというような事件が全く発生しない、純粋なる「歴史ミステリ」って初めてじゃないかな? というわけで、隠れキリシタンを巡っての歴史ミステリ。
正直なところ、この作品の中で出てくる資料とか、そういうものについての描写がどこまで正しいのか? というのはよくわからない。ただ、そんな中で出てくる「鹿児島にもキリシタンがいた」という主題。そこへ向かって、色々と調べていく様が楽しい。
物語の冒頭で出てくるテレビ番組の中で大学教授が指摘する「隠れキリシタン」とされるものの行動とキリスト教の教えの相違。しかし、そもそも戦国時代当時のキリスト教の教え、と現在のそれの違い。さらに、彼らが日本に進出するにあたって、「教えを広める」ために現地に合わせたこと……。そういうものを考えると、違っている、というのは当然のこと。しかし、何となく違うものだ、という前提に立つと違って見えてしまう、というような構造的な部分の話。
一方で、鹿児島など、九州南部にまつわる様々な「隠れ」たもの。キリシタンだけでなく、一向宗であるとか、そういうものも鹿児島、島津藩では近畿になっていたし、また、河童、山童といった民俗学的な話も絡んでくる。そのなかで、鹿児島にも……となっていくが……。一度は、その説に自信を持ち、しかし……というような流れなどは、うまく天丼をやった感じもあるし、その上で、などしっかりとまとまっていると思う。純粋な歴史ミステリとして、素直に面白い。
ただ、気になったのは、当初の目的とかが終盤、ぼやけているように感じられる部分。あと、探偵役となる水瀬。彼女は、タイトルの通り、家などから全く出ることのできない「引きこもり」という設定だったのだけど、途中から全く意味がなくなっているように感じられるところ(単に、引っ込み思案な人くらい) この辺り、もうちょっとうまく料理で来たんじゃないかな? というのを思った。些細な事、っちゃあ、些細なことなんだろうけど。

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