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留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白

著者:山本巧次



廃線前の撮り収めのため、北海道・留萌本線に乗車した鉄道ファンの浦本。同じような乗客が何人かいる中、乗客の一人がダイナマイトを手に、その車両をハイジャックしてしまう。乗客4人と共に車両内に閉じ込められてしまうことになる。一方、その事件に当たることとなった道警の安積。そんなところに入ってきた犯人からの連絡は「道議の河出を交渉役に、身代金として1億7550万円を要求する」というものだった……
鉄道を題材にしたミステリが多く、自身が鉄道会社勤務という著者の作品。本書でも、そういう経歴が強く出ているな、というのを思う。
物語は、冒頭に書いたような形でスタート。交渉役として指名された道議・河出は、元々、建設会社の社長であり、道議の中でも道路工事などを中心に力を発揮している議員。そして、その中で黒いうわさも絶えない存在。身代金である1億7550万円という中途半端な金額もまた、そこに関連しているらしい。さらに、車両内に犯人はいるが、トンネルの中で立てこもり、連絡すらつかない状況。そんな中で警察署へと掛かってくる電話は、東京から。さらに、身代金の振込先は……
まず、前半は利用者が多いとすら言えない、廃線が決まった鉄道でのハイジャック。そして、まるで遠隔操作のような日本全国を舞台にしての脅迫、身代金の受け渡しという意表を突いた犯行に引き込まれる。そして、留萌本線の廃線撤回を言いながらも浮かび上がってくる道議に対する疑惑。そして、犯人の一人は判明するが、その裏で糸を引いている者がいるのでは? という疑惑が浮かび上がっていき……
テンポ良く、事件の様相が移り変わっていくために、どんどん読み進めることが出来る。そして、すべての謎が解けたとき……
北海道開発の歴史の中で外せない炭鉱の開発というもの。人々は、そのために移り住み、そこを故郷としていた。しかし、その炭鉱の閉山。国、自治体、大企業と言った、末端の人々にはどうしようもない事情はある。でも、だからこそ、当時の仲間たちが味わった悔しさ。そんなものと、その歴史を彩ってきた鉄道の廃止、というのを繋げたラストシーンは、何とも言えないノスタルジーを最後に残してくれた。

No.5581

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